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第34話 この子は渡さない
濱田side
どうか……
どうか……
無事に産まれてきてくれ!
結局俺は、臆病者のルンペルシュテルツキン。
立ち合うのが怖くて、分娩室の前で祈ることしかできひんかった。
バン!!!!!
濱田「うわっ!?なんや?」
屋内なのに、突風が吹く。
人っ子一人おらんはずの廊下の窓が、いきなり開くと………
ヨココ「ちゃんと帰って来ると思ってたわ。久しぶりね、タカヒロ。」
濱田「おかん……」
あの時のまま。
幼い記憶ながら、母さんの顔はしっかりと覚えとる。
濱田「こっ、子供は渡さへんぞ!」
ヨココ「タカヒロは、わかってへん。貴方が何回父親になっても、災いの種となるだけよ。最初の子も、結局短命やったでしょ?」
濱田「キミタカは災いなんかやない!」
ヨココ「マユミは間違いなく貴方を苦しめるわ。」
…………マユミ?
濱田「誰や?マユミって。」
ヨココ「あの歯並びの悪い年増はそう名付けるわ。」
濱田「ムラコのは八重歯や。」
ヨココ「とにかく、ここを通しなさい。」
濱田「アカン!」
ヨココ「貴方の為なのよ?」
死んだはずの母さんが、
どうしてこんなに俺に執着するんや?
ヨココ「はぁ。私が生きていて、一緒にネバーランドに行ってれば……」
濱田「何で、ネバーランドのこと知ってんねん?」
あれは、父さんが借金から逃れる為に行ったはず。
ヨココ「元々は、貴方を大人にさせまいと私が行かせようとしたの。」
濱田「どうして?」
ヨココ「大人になれば、人の親になれば、貴方が破滅するからよ。」
破滅………
俺も昔、預言者から聞いた。
母さんも知っとったのか?
ヨココ「マユミは断ち切るために必要なの。それに………」
オギャー
オギャー
う、産まれた!!!
ヨココ「さぁ、マユミを渡してもらおうか?そこにおるんやろ?ブルーフェアリー!!」
すると、分娩室の扉が勢いよく開いた。
母さんの魔法?
藤原「ヨココ!!!」
ヨココ「さぁ、その子を渡しな!!」
瞬きをしたみたいに、
一瞬だけ辺りが暗くなると………
藤原「はっ!?」
ムラコ「………ま、マユミぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」
ヨココ「んふ。」
産まれたばかりの赤ん坊は、
とっくに母さんに抱かれとった。
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作者名:るびぃ | 作成日時:2022年9月22日 22時