番外編�� ページ47
#2 シズマとリュウセイ
その日は突然訪れた。
藤井「おかん、お粥できたで。」
『シズマ、いつも悪いねぇ。』
藤井「来月になったら、薬買いに行けるから、それまで辛抱してな。」
風邪を拗らせたおかんは、寝たきりの生活になっていた。
ﾄﾞﾝﾄﾞﾝ!!
『……のんすけちゃんやない?』
藤井「んな訳ないやろ?」
羊を探して以来、何度も遊びに来ていたのんすけはすっかり姿を見せなくなった。
あの日の子羊もすっかり大人になり、刈り取った羊毛は国へ献上させてもらっとる。
藤井「どちらさんですか?」
「今すぐ城へ来なさい。」
藤井「は?」
俺なんかしたか?
「貴女ならその意味が分かりますでしょう?…母君。」
俺は横になったままのおかんを見る。
すると………
『…リュウセイの身に何かが起きたのですね。シズマ、私はもう良いから、その人に従いなさい。』
城へ行くと、出迎えに現れたのは、まさかの国王やった。
そして、知ったんや。
俺には双子の兄がおって、そいつは王子やったこと。
そして、その王子が死んだこと。
藤井「俺が………王子に??」
更に急なことが立て続けに起こる。
王子には許嫁の白雪姫がおって、今夜は晩餐会が行われると。
俺はまだ、恋というものをしたことが無いのに。
そりゃ、のんすけは可愛らしいなと思うことはあったけど、村のちびっこと遊んでる感覚と変わらなかった。
◇
藤井「この度は、お招きいただきありがとうございます。」
中間「いらっしゃい、リュウセイ王子。今日は楽しんでね。」
白雪姫の継母のジュン女王は、
晩餐会というのに、黒ずくめの装いで、
不気味な笑みで俺を迎えた。
そして、気味が悪いのは女王だけやなかった。
小瀧「………」
全く喋ろうとせず、俺を睨みつける白雪姫。
確かに美人やけど、そんな顔されたら恋もクソもない。
でも、この縁談が破談になったら……
まして、俺が影武者やってバレたなら……
間違いなく、俺の命は無い。
俺は必死やった。
◇
小瀧side
晩餐会の前夜。
私は憂鬱やった。
ｷﾗｯ
小瀧「ん?」
窓から見えたのは、満天の星空を駆け抜ける流星群。
私は星に願いを込めた。
小瀧「どうか、晩餐会が無くなりますように。ジュンちゃんが、また優しくなってくれますように。それから……」
無数の流れ星にこれでもかと願う。
小瀧「王子がリュウセイやなくて、シズマになりますように!………何言ってんやろ、私。」
自分が発した言葉に恥ずかしくなって、
一人、ベッドに沈んだ。
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作者名：るびぃ | 作成日時：2021年11月22日 4時
