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手を引かれて向かったのは1台の車 。
その人は私の手をぱっと離すと運転席に乗って 。
自分も乗っていいものか迷っていると窓が開いた 。
「 ん 、乗って ? 」
そう言われて 素直に助手席のドアを開ける 。
と 、中から漏れるクラクラしそうなほど甘ったるい匂いが鼻を突く 。
だけど それを我慢して車に乗り込んだ 。
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「 ふは 、マジじゃん 、」
「 …? 」
言っている意味が分からずただただ相手を見つめる 。
「 知らない人 、しかも男の車にそんなひょこひょこ乗るやつなんていねぇよ 」
そう言ってけらけらと独特な声で笑う 。
でも確かにそれは正論 。
「 だって… 、」
「 まあ 、いいけど 。…俺 、伊野尾 。」
突然の自己紹介で私の声を遮る 。
だって 、の後に何を喋ろうかなんて考えてなかったから逆にありがたかったんだけど 。
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「 えっと 、あ 、A… 、です 。」
名乗ってもらったら名乗るのが常識かなって 。
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伊「 A 、」
呼ばれる名前にぴく と反応する 。
それと同時に車は動き出して 。
でも 、その後は何も言わないから 、
呼んだのか ただ呟いただけなのか 、
わかんなくてとりあえず見つめる 。
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どうしてだろう 、
その横顔と 、ハンドルを握る手と 、私を呼ぶ声 。
その全てに 酔ってしまいそうだった 。
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作者名:つむぎ . | 作成日時:2017年6月4日 19時