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「 合鍵じゃないなら 言ってくれれば良かったのに 。」
待たせてしまったことを謝ってから少し文句も言ってみる 。
伊「 だって言う手段がねぇもん 」
そう言いながら 棚やタンス、ベッドの下を漁り始める伊野尾さん 。
伊「 あったあった !」
少し声を高くして 私の前に立つと 握りしめた手を目の前に差し出して 。
伊「 はい 、合鍵 、」
ちいさいクマのキーホルダーがついた鍵 。
あげるよ 、って言うから素直に受け取った 。
「 可愛いクマ 。」
茶色いふわふわのクマは なんだか伊野尾さんみたいだ 。
伊「 あとさ 、」
ぼふ と音を立ててベッドに座り なにやら携帯をいじる 。
伊「 連絡先、教えて 。わかんないと不便 」
「 え 、…あ 、」
連絡先の登録の仕方もろくに分からず あたふたしてるいると 、貸してって言って私の携帯を ひょいと取った 。
すると慣れた手つきで自分の携帯と私の携帯を行ったり来たり 。
伊「 お前 、友達いねーのな 」
「 ……るっさい 、」
余計なお世話だ 。
まあ、事実ではあるけれど 。
伊「 よし…っと。ほれ 、」
そう言うと携帯を投げてよこす 。
電話帳の1番上 。
今まで無かった " 伊野尾 " の文字 。
なんだか胸が高なって 嬉しくなって 、
伊「 いつでも連絡してね 、」
気がついたらその名前を押していて 。
すぐそこで鳴る携帯 。
伊「 …今じゃねぇっつの、」
その横で呆れたように笑う伊野尾さん 。
「 ふふ 、」
この生活も 、
なんだか悪くないかもしれない 。
なぁんて思ったりもして 。
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作者名:つむぎ . | 作成日時:2017年6月4日 19時