file1. 前世でぽっくりいっちゃった!?ver.7 ページ7
「あーーーーっ!やっと終わった!! 」
住民に配っている広報の記事の作成の最後の仕上げをし、午後10時を回っていたころに全ての業務を終えて、疲れたように言った。
辺りは真っ暗な室内で光っているパソコンの画面には、住民の戸籍の情報がかかれている表が、ずらーっと縦に広がっている。
手元には触りすぎてくしゃくしゃになった戸籍情報の紙が散乱しているのを見ながら、職場で缶詰生活だったこの一か月から、ようやく抜け出せる事実を実感するのには時間がかかるのだろうと思いながら、片づけを始める。
むしろ喜びより虚無のほうが近い。何にも感じないのだ。幼いころの両親からの抑圧のせいからか、自分の感情が麻痺してしまったのだろう。相手がイライラしていることを察するとどうやら口数が少なくなるらしい。これはいったい何なのだろう。
「……足、痛あ……はあ、……今日失敗しちゃったなあ……お客様を困らせてしまった、やっぱり私公務員向いてなかったんじゃ……」
そんなことはどうでもいい。
数時間前に役所にかかった一通の電話が、頭から離れず気分が沈み、ひどく悲しい気持ちを延々と引き起こした原因である。
青色申告の詳細を説明し色々聞かれた朱莉は、申告書関連の業務に慣れてないことで対応に苦戦し、クレームを受ける羽目になった。
この課に配属されてまだ2か月しか経っていないことも相まって余計に、気が付けば毎回神田に怒られる、そんな日々がここのところほとんどだった。
(ノイローゼになりそう……でもここのところほとんど怒られていたからなあ、特に初めてやる作業とか、どんくさいからか、嫌味しか言われなかったなあ)
「……夜中に一人で泣いてたな……私接客とか苦手だったのによく頑張ったと思うよ……。私が弱すぎるから泣かないように心を鍛えないとって思ってたけどね……、学生とは違うんだよね、ってかさ、クビにするんだったらさっさとクビにしてくれればいいのに」
疲れた足取りで役所の出入り口まで歩きながら、ジャンパーを着て鞄を肩にかけて、車の鍵をとる。車まではそんなに遠くない普通の外にある駐車場まで少し歩き、車の鍵でロックを解除して朱莉は車に乗り込む。
遠くから車の音がしたような気がしたから何だろうと考え、早く帰ろうと扉を閉めようと手をかければ、タイヤのすれる音が近くで聞こえた。瞬時にまずいと思い、その場から立ち去ろうとエンジンを入れたとたん。
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作者名:みーー | 作成日時:2022年5月16日 18時