MSM Ⅰ (ページ9)

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「こっちがMSMのメンバーの、佐久間大介。そんでこっちがちょっと別件の協力のために西部から来てもらった、向井康二」

　佐久間と紹介された小柄な男は、よろしくピーマン！、と先程と同じく訳の分からない挨拶と共に頭を下げた。
　その隣に座る茶髪の西部なまりの男は向井康二と言うようだ。どうやらMSMのメンバーでは無いらしいが、それなのに彼らの正体を把握していることに目黒は少し驚いた。
　二人ともが愛想良く満面の笑みを顔に浮かべていて、どうやら怖い人物では無さそうだ。

「別件……？」
「あー、まぁそれは気にしないでおいて。悪いけど言えないからさ」
「この街には危害は加えねぇから」

　そう言われてしまえばそれ以上は彼らの仕事に口を挟むことは出来ない。少し気になったが、目黒はこくりと頷くと、佐久間と向井へ自己紹介をした後、先程の話を続けることにした。

「それで、『放火魔』の話、なんすけど」
「依頼は殺害じゃなくて捕獲、だよな？緊急性は高いの？」

　渡辺の口からサラリと飛び出した『殺害』と言うワードに動揺したものは一人もいない。それどころか佐久間はニコニコとした笑みをその顔にうかべたままで、目黒はなんだか落ち着かなくてモゾモゾと椅子に座り直した。

「……一応、まだ死人は出てない、ので」
「異能力者って分かったのはなんで？」

　丸く大きな瞳を真っ直ぐに向けて佐久間が問いかける。その質問の内容は尤もで、死人も出ていないただの放火魔の捕獲をわざわざMSMに依頼する理由なんて、相手が異能力者以外に有り得ないからだ。

「火の付き方が、異能力でないと考えられないくらい、おかしかった」
「何？お前直接見てたの？」

　渡辺にとっては通常運転だが、やや口の悪い質問にも目黒は特に気にした様子はなく、はいと短く返した。そんな目黒に当日の様子を説明するよう、促す様に深澤が頷いてみせる。

「最初は火災の通報を受けて俺たち警備隊が駆け付けたんす。それで救助の為に中に入った所で、その炎が建物の外側しか燃えてないことに気が付きました」
「建物の外側……？」
「はい。それでとりあえず住民の救助をしていると、少し離れたところでまた火災が発生しました。そしてそこもまた同じように、外側だけが燃えてて……。それがその日だけで四軒も」
「四軒！？」