MSM Ⅰ (ページ7)

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しかし、目黒は二人の言葉を聞いて慌てたようにハッとすると、片手を顔を同時に横に振って見せた。

「いや、違います、すんません。俺、警備隊の仲間から『MSM』さんのことは聞いたことあったんで……その、ちょっと憧れてて」
「へ？憧れ？」

　あまりにも聞き馴染みの無い言葉に渡辺も深澤もキョトンと顔を見合わせてしまう。そんな言葉を言われたのは初めてで、返す言葉もすぐには出てこない。
　一方目黒はそんな動揺する二人に気がついていないのか、マイペースに話を続ける。

「俺、異能力をちゃんと使いこなせるってスゲーって思ってて。しかもそれをしりしよく？っていうか、自分の為じゃなくて仕事に使えるって、マジでスゲーなって思います、ガチで。だから、MSMさんの話聞いた時、カッケーなって。なんか、憧れっていうか尊敬っていうか、そう思ったんすよね」
「…………お前、もしかして結構バカだな？」

　最初の発言からうっすらと思っていたことだが、今の話を聞いていて疑惑が確信に変わった。渡辺が問いかければ、「え、分かります？」と目黒はキョトンとして見せた。

「んははは！お前いいな。やべ、今日の仕事楽しみになってきたわ」
「はは、分かるわ。目黒、よろしくな。マジで堅苦しいのとかいらないから、仲良くやろうぜ」

　街の警備隊が協力、と聞いた時はどれだけ頭の固いやつが来るかとめんどくさく思っていたが、これは嬉しい誤算だった。
　渡辺と深澤がそう言って笑ったのと、先程とは比べ物にならないほどの大きなドアベルの音が鳴ったのは同時だった。

　正確には、二人の男がドアベルよりも大きな声を出して入って来たのが、だが。

「ただいま戻りましたでやんすーー！！！」
「ふっかさん！しょっぴーー！！俺やでーー！！」

　突然の大声にビクリと肩を跳ねさせた目黒の向かいで、渡辺は溜息をつき、深澤は疲れたように乾いた笑いを漏らした。

「ごめん、目黒。一番“取って食いそうなやつ”来ちゃったわ」
「え、どういう……、」

　――ことですか。

　目黒の問いは最後まで音になることなく、体の横にぶつかってきた衝撃によってかき消された。