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プロローグ ページ1
子供の泣き声、大人たちの怒号。
空は煙によって重く曇り、星はおろか微かな月明かりすらも見えない。
そんな中で肌に触れる火の粉の熱さだけが、これは現実なのだ、と嫌でも俺に知らしめてくる。
「……ラウール」
震える声で呼ばれた自分の名は、きっと俺にしか聞こえてないだろうと思うくらいには、小さく掠れていた。
そんなに情けない顔してちゃ、イケメンが台無しだよ。
笑ってそう言おうと思ったのに、熱い空気のせいでひりついた喉では、そんなからかう言葉すら口から出すことが出来なかった。
ねぇ、めめ。
君は俺の事を天使のようだと言ってくれたけど。
何人もの命が奪われ、多くの人が泣いて、君が深く傷ついているこんな時に。
どうしようもなく喜びを感じている俺は、天使よりも、よっぽど――。
――悪魔の方が、お似合いだね。
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作者名：にけ | 作成日時：2021年1月3日 4時
