花を咲かせて。 ( 橙 ) (ページ24)

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「ちょっとここ見たい。」
2人で少し歩いてマルイに入ったところであたしが指差したのはいつも来ている女子に人気な洋服屋。

意外に思われるかもしれないが、洋服に関しては高級ブランドかどうかについてあまり気にしてない。
というのもあまりに高価な洋服は派手すぎたり前衛的すぎたりして自分の好みに全く合っていないのだ。
ただお金を散財したいだけで目立ちたいとかいう願望は0に近い＿いや、むしろ目立ちたくない＿あたしは変に人の目を引きつけるお高めな服は買わないようにしている。

「うわぁ、可愛いお店やなぁ。」
僕場違いやない？と笑いながらも一歩先に店の中に入っていく彼。

手はまだ繋がれたままだ。

お店に入ると今季の新しい洋服が入ったみたいで以前来た時と全く商品が違っていた。

銀色のハンガーに掛かっている多くの服をなんとなしに1枚1枚触ってペラペラめくっていく。

ふと目に留まったのは小さい花柄が描かれたシフォンワンピース。
空いてる右手でそのワンピースを取って自分の身に当ててみる。

「めっちゃかわええやん！」
上から降りかかった声に顔を上げると目を大きく見開いて口角を上げている隆ちゃん。

そんなストレート褒められるとなんて返していいかわからなくて首をかしげるだけとなってしまった。

と、目の端に店員さんが来るのが見えた。
「わあ！めっちゃ似おうてます！」

側についたのは小柄な男性の店員さん。
このお店は僅かながら男性向けの服も売っているので男の人が店員さんとしていてもおかしくはない。
でも女性客に男の店員さんが付くのは結構珍しいかも。

「この商品ついこの前入荷したばっかなんですけど、お客さんにホンマに人気で…でもお姉さんほど似おうてる方おりませんでしたよ～。」
その男性店員さんはゆったりした関西弁で褒めてくれるからなんだか嫌味なく聞こえる。

東京で関西弁を喋る人を見つけると謎のシンパシーを感じてしまうのは隆ちゃんも一緒だったようで。
「店員さん、関西出身なんですか？」
そう聞く隆ちゃんにびっくりしたような目を向ける店員さん。

「あれ…出ちゃってました？僕お仕事中は関西弁出さないって決めてるんだけどな。」
お姉さんにそのワンピース似合いすぎてテンション上がって出ちゃったかもと笑う彼の言葉には本当に他意が含まれていないように感じた。

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