花を咲かせて。 ( 橙 ) (ページ19)

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「顔真っ赤や、タコやタコ。」
ケラケラと笑いながら言うと隆ちゃんは目を泳がせながら
「そんな可愛い笑顔で言われたら照れるに決まっとるやん。」
そう言う。

もう少し冗談っぽく返してくれないとこちらもなんて返したらいいかわからず、あたしも困ってしまった。

と、隆ちゃんに両肩に両手を置かれて真剣な眼差しでこちらを見られる。
「そんな可愛い顔、誰にでも見せていいもんちゃうよ。勘違いする男もたくさんおると思うし。」

真剣な眼差しでも耳は未だに真っ赤で手はあまり肩に触れないように少し浮かせている。
いつもベタベタ知らない男に触られるあたしにはなんだかそのピュアさが可愛く思えて。

「隆ちゃんって、ヘタレやろ。」
素直じゃないあたしから出る言葉は本当に可愛くない。
隆ちゃんはあたしとは対照的に感情にとても忠実であたしから発せられた言葉に口を尖らせて肩に置かれていた手はスッと降りる。

「言わんでええやんかぁ…Aちゃん、意地悪やなぁ。」
その姿もまた可愛らしい。

「ね、隆ちゃんどうせ暇やろ。」
「いや、なんなんその決めつけぇ…まあ暇といえば暇やけど…」
「やっぱ暇やん。ならあたしの買い物付き合ってぇや。1人で行ってもいつもと同じでつまらへんし。」

ね？と聞くと彼はえ、えと少し動揺した声を出したかと思えば財布とか携帯とか持ってくる！と猛ダッシュをしてマンションの中に入っていった。
その後ろ姿を見てまた笑みをこぼしてしまう。

その時またふと花壇のポピーが目に入る。
この数日間でこのポピーを意識するのは何回目だろうか。

恋の予感…か。

あたしが今隆ちゃんに抱いている感情はきっと恋とかそういうんじゃない。
隆ちゃんは面白いし優しいし可愛いけどただそれだけで、きっとそれ以上でもそれ以下でもない。

そう心で唱えた後あたしはまたそのポピーたちから目を逸らした。

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*前回更新した際Ep.18が抜けていました、大変申し訳ございません。