・ ページ4
・
暫く私はこの少年を見守ることにした。
さくまは毎日毎日、鬼達のお零れをもらいながら、でも決して人間だけは口にしない。
それでも肉は食べたいのか我慢の限界を迎えると涎を垂らしながら、お零れの中に混じった鹿肉や兎の肉を夢中になって食べていた。
「ごめんね…ごめんね」
食べた罪悪感から吐くこともあった。
人間でも動物を狩って食べるというのに、さくまはそれすらも申し訳なさそうに懺悔する。
きっと心優しい鬼なんだろうな。
そして大人の鬼達ために身の回りの世話をしながら、やはりちょっかいをかけられてる日々を彼は送っていた。
「うあっ！！」
焚き火のために木を切っていたら、背後から石を投げつけられる。
誰かのためなのか花を積んでいれば、突然現れた鬼に背後から首を締め上げられて「や、めてっ」と苦しむ。
そんな感じで毎日誰かに何かしらの虐めを受けながらも、さくまは少しずつ成長していった。
「母ちゃん、今日は秋桜の花を積んできたよー」
いつの間にかさくまは青年の姿にまで成長していた。
そして私は思い出したんだ、このさくまは＿＿私が恋しく想う鬼の佐久間さまだと。
出会った頃より幼さがあるけど、けれど黒髪の中に金の髪が混ざり始めた彼は佐久間さまで間違いない。
佐久間さまは小さなお墓の前にしゃがみ込んで、秋桜の花を備えた。
"母ちゃん" つまり、お母様？
「母ちゃん、今日も父ちゃんは帰って来なかったよ。父ちゃんが居れば、兄貴たちももう少し大人しくしてくれるんだろうけど、何処に行っちゃったのかなー」
フッと悲しそうに口角を上げ笑う佐久間さま。
こんな彼は見た事がなくてチクリと胸が痛くなった。
佐久間さまのお父様は行方知らずで、お母様はすでに亡くなっていて、そしてあんなに小さな頃から一人で兄達の虐めに耐えていたのか。
……佐久間さま。
出来ることなら、小さなあなたをギュッと抱き締めてあげたいです。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1592人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Harumi(プロフ) - Twitterにて、フォロ申請させていただきました。承認して頂けると嬉しいです。 (2023年2月3日 12時) (
レス) @page47 id: b212bc44a9 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - あやかぽん。さん» あやかぽん。さま！ ありがとうございます(^^)ファンタジーの世界へようこそ！って大したものは書けてませんが。続編も公開してますので良かったら読んでやってください(^^) (2020年12月5日 21時) (レス) id: 86c2a4761a (このIDを非表示/違反報告)
あやかぽん。(プロフ) - 完結おめでとうございます！！新しい世界に連れて行ってもらった気持ちです(笑)とても素敵なお話しでした。もっかい最初から読もうっと(´∀`) (2020年12月5日 20時) (レス) id: b8552d059d (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - ゆきさん» ゆきさま、ありがとうございます(^^)わーい！銀にぃに触れてもらえて「おお！」となりました（笑）不器用な彼がある意味、このお話を引き立ててくれたのでコメントに書いてくださり嬉しいです！続編も楽しんでもらえるように頑張ります！ (2020年11月30日 9時) (レス) id: 83fde2196b (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - acoさん» acoさま、ありがとうございます(^^)鬼退治終わってしまいましたが、続編ではまた彼ら暴れる予定ですので読んでもらえると嬉しいです！ほんとその通りですよね、佐久間くんは愛させるべき人なんですよ(o^^o) (2020年11月30日 9時) (レス) id: 83fde2196b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆきんこ
| 作成日時：2020年11月11日 12時
