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少し時は流れた。
巫女さまは鬼ヶ島の外れで一人で暮らしてて、そこへ毎日ように鬼がやってくる。
鬼には他にも嫁がいたようだけど、それは子孫を残すための関係らしく鬼同士はそんなに執着してないみたい。
「だったら佐久間さまのお父さまは結構変わり者だったんですね」
「かもね。人間は餌としか思ってないし女は子を産むためのものって認識が普通の鬼の世界で父ちゃんだけは母ちゃんを愛してたから」
変わり者。確かにその通りみたいで、巫女さまのお腹を見れば随分と大きくてその中にきっと佐久間さまがいるのは分かった。
そしてそのお腹に耳を寄せた鬼は言う。
『 おい、息子〜。とっととでてこねえか! 母ちゃん守ってやれよ! おーい 』
『 そんな直ぐには産まれないわ。それに人間の赤ん坊はとても弱い 』
『 あ、そうなのか? 銀や他の息子たちは産まれてすぐに殺りあってたぞ 』
巫女さまお腹を抱えて凄い視線で鬼を見てる。
その気持ち察します。
それから二ヶ月程して、おぎゃあおぎゃあ!と元気に泣いて産まれたのが佐久間さまだ。
「あは、とっても可愛らしい」
「でやんしょ? 佐久間だからねぇ」
巫女さまは一人で産み、ほとんど一人で育てていた。
鬼は佐久間さまを可愛がってはいたけど、何をするにも鬼流なので巫女さまは預けたがらなかったのが正しい。
あ、銀次郎だ。
すやすやと寝ている佐久間さまのもとに巫女さまの目を盗んで近寄り、上から覗き込んでいる。
ぱちぱちと瞬きして、眉間の皺をピクピクさせて。
『 ふふ、銀次郎よ。抱いてみますか? 』
『 ……… 』
なにも言わないけど、巫女さまには銀次郎から危ない気配は感じないのか佐久間さまを抱き上げて、銀次郎の腕の中に抱かせてやってる。
『 柔らかいな。それに甘い匂いがする 』
『 落とさないでね。それと多分それは乳の匂いでしょう 』
『 そうか 』
『 銀次郎よ。私の頼み一つだけ聞いてくれますか? 』
抱き飽きたのか銀次郎は、佐久間さまを片手で猫を摘むようにして持って上下に揺すっている。
『 あきゃっ!あきゃっ! 』と、喜んでいる赤子の佐久間さま。
あーあ、起きちゃってるし。
『 なんだ? 』
『 もしも私が居なくなったら、佐久間を育ててくれませんか。一人でも生きる知恵を教えてほしい 』
佐久間さまは、この先の未来を知っているからかとても悲しそうな目をしていた。
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Harumi(プロフ) - Twitterにて、フォロ申請させていただきました。承認して頂けると嬉しいです。 (2023年2月3日 12時) (レス) @page47 id: b212bc44a9 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - あやかぽん。さん» あやかぽん。さま! ありがとうございます(^^)ファンタジーの世界へようこそ!って大したものは書けてませんが。続編も公開してますので良かったら読んでやってください(^^) (2020年12月5日 21時) (レス) id: 86c2a4761a (このIDを非表示/違反報告)
あやかぽん。(プロフ) - 完結おめでとうございます!!新しい世界に連れて行ってもらった気持ちです(笑)とても素敵なお話しでした。もっかい最初から読もうっと(´∀`) (2020年12月5日 20時) (レス) id: b8552d059d (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - ゆきさん» ゆきさま、ありがとうございます(^^)わーい!銀にぃに触れてもらえて「おお!」となりました(笑)不器用な彼がある意味、このお話を引き立ててくれたのでコメントに書いてくださり嬉しいです!続編も楽しんでもらえるように頑張ります! (2020年11月30日 9時) (レス) id: 83fde2196b (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - acoさん» acoさま、ありがとうございます(^^)鬼退治終わってしまいましたが、続編ではまた彼ら暴れる予定ですので読んでもらえると嬉しいです!ほんとその通りですよね、佐久間くんは愛させるべき人なんですよ(o^^o) (2020年11月30日 9時) (レス) id: 83fde2196b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆきんこ | 作成日時:2020年11月11日 12時