守りたい【煉獄杏寿郎】

二十九頁 ページ31

胸の前に構えた刀がバキッと折れた音がした。


上弦の鬼が私の腹に刺さり、口からは血がゴボッと溢れる。


「A！！」


意識が失いそうになるのを煉獄さんの声で堪える。
意識が一瞬遠のいた。


鬼が何かを言っているが、耳鳴りがして聞こえない。

「……死んでしまうぞ…！！…」

誰が……？私が？…まだ、まだ、終わってない。
だんだんと右耳から音が聞こえてきた。


手が後ろから伸びてきて、煉獄さんが私の後ろから鬼に向かって刀を頸に押し当てるのが分かる。
　

「オオオオオオオ！！！」


私も同じように折れた刀を持ち、煉獄さんの刀の上から押し当てる。

私の頸を目掛けて伸びてきた腕を、煉獄さんの左手で塞がれる。

また、守られてしまった。



貴方を守れたのか確認したいのに、後ろを振り向く事すら許されない。
　

でも、あんなにも死が、鬼が、怖かったと言うのに、何故か体は貴方の前にすんなりと動けた。



多分私は死ぬ。



でも怖くなかった。
寧ろ、動けた、出来た、という気持ちの方が強かった。


考えるよりも前に咄嗟に貴方の前に身体は出ていた。





私は使命を果たせたのかだろうか？



猗窩座が私を見る。
その目には何の感情を含んでいるのか私には分からない。



守りたい、煉獄さんを守りたい。



私を突き動かすのはただそれだけ。



貴方が死ねば多くの人が悲しむ。


私にはもう家族はいない。


友人も少ない。



でも貴方は違う。




だから私の命の灯が尽きるその瞬間まで、私は諦めたくない！！！！！

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