二十二頁 ページ24
「父上、母上、兄上、兄様……私は行かなければなりません」
父上は、優しい人であった。
剣術を私も習いたいと言った時は、お前は女の子なのだからしなくて良いと言われた。
それでも剣を握ろうとする私を打った。
父上を怖いと思ったのはこの時からだ。
私を愛してくれたからこその優しさだったのかもしれない。
反対する父上を咎めてくれたのは、兄上だった。
兄上は笑顔の絶えないよく笑う人であった。
私が泣いている時は一番に気がつく人であった。
弱い私に根気強く剣を教えてくれたのも兄上だった。
私を支えてくれたのは兄様だった。
剣術をやめなさいと何度も私を止めるも、稽古が終わった後にお菓子をくれて褒めてくれるのは兄様だった。Aは強い子だと励ましてくれたのも兄様だった。
母上は何も言わずにただ暖かく私を見守ってくれた人だった。手に豆ができ、潰れた時も、悲しい顔をせずに手当てをしてくれたのは母上だった。
私が寝た後に、私の傷だらけの手を握り泣いていたのも母上であった。
私が剣を握るのを見るのが辛くとも、私の前では顔には出さず、優しく微笑み応援してくれる人だった。
「私はまだ、未熟者です。剣も上手くなりません」
まだ柱にもなれていません。
「私は弱いのです」
鬼が家に入って来た時、私は剣を何度も握って来たと言うのに足がすくんで動かなかった。
父上が戦う姿を見ている時も、母上が斬られそうになった父を庇って血を流した時も。
父上が母上の死を悲しみ、動揺したときに父上が斬られた方も。
兄上と兄様が私を庇いながら戦い、最期は私に覆い被さり私を守るように亡くなった時も。
全部、全部……私が弱いから。
私は自分の弱さを呪った。
それでも、私は前に進まなければいけない。
ここに来て、暖かい家族にまた会えた。
本当はずっとここにいたい。
でも、
「守りたい人がいるのです」
炎を見に纏い、堂々とした立ち振る舞いで皆を守る凛としたあの人を。
笑顔が絶えない、とても素敵なあの人を。
「父上、母上、兄上、兄様、どうか見ていて下さい、私の戦う姿を」
夢だと分かっている、でもここで言わせて下さい。
貴方方に直接言いたかった事を。
「私は、この家族に生まれてとても幸せでした」
これらの夢は全部私のが過去だ。
千寿郎君との夢も、今ここにいる私の家族との夢も、全部私の楽しかった過去だ。
煉獄さんとの夢は……あれはきっと、私の…。
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千春餅(プロフ) - 黒揚羽さん» ありがとうございます!また次回作品を投稿する際はよろしくお願い致します!ありがとうございました!! (2020年11月2日 21時) (レス) id: b2822671a3 (このIDを非表示/違反報告)
千春餅(プロフ) - あさこさん» コメントありがとうございます!絶対結ばれます!笑最後までありがとうございました! (2020年11月2日 21時) (レス) id: b2822671a3 (このIDを非表示/違反報告)
黒揚羽(プロフ) - な、涙が止まらない…来世で結ばれて欲しい(´;ω;`)完結おめでとうございます!これからも応援してます! (2020年11月2日 1時) (レス) id: 86957641b4 (このIDを非表示/違反報告)
あさこ(プロフ) - うわーん涙がとまらない、、、、(´;ω;`)来世で必ず結ばれますように、、、!! (2020年11月1日 22時) (レス) id: 81f776d056 (このIDを非表示/違反報告)
千春餅(プロフ) - 四ツ谷さん» ありがとうございます!最後の展開はこうしようと最初に決めていたのですが、後半になるにつれて「2人とも生きて欲しい」という気持ちが出て来てすごく悩みました。来世で2人とも幸せになってほしいですね…。ありがとうございました!! (2020年11月1日 19時) (レス) id: b2822671a3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:千春餅 | 作成日時:2020年10月21日 15時