濡れて ページ7
上鳴くんを待って20分くらい経つけど、戻ってくる気配がない。
もしかして私のこと忘れてる！？いや、でも上鳴くんはそういうことしないお人だし......。
自問自答を繰り返す。
「お待たせー！」
水溜まりの上をバシャバシャと音を立ててこっちへ向かって走ってくる上鳴くん。
「ふぅ......待たせてごめんな」
私の元に来て言う。
『あ、全然大丈夫です！それより、びしょ濡れですよ！』
上鳴くんはシャツから身体がほんのりと透けている様に見える。
「ん？うわっ、めっちゃ濡れてんじゃん！」
濡れていることに気付いたみたい。今まで気付かなかったんだね......。
『これ、どうぞ』
私はタオルを差し出す。自然な流れ、だよね？
「え、いいの？」
上鳴くんはきょとんとしている。
『いいんですよ！上鳴くん風邪ひいちゃいますよ！』
「じゃあお言葉に甘えて」
そう言ってタオルで身体を拭く。その間、私は上鳴くんに背を向けていた。
「ありがとな、Aちゃん。ってなんであっち向いてんの？」
身体を拭き終えたであろう上鳴くんが私に尋ねる。
『や、あの、上鳴くんのお身体を見るのは、ちょっと......』
なんていうんだろう。異性の身体とか見れるわけない！！ふつーに恥ずかしい！！
もちろんそんなこと言えない。
上鳴くんのほうを向く。まだ少し透けている。うう、眩しいっ。
ふーん、と言いつつも上鳴くんはニヤニヤしている。
「それってつまり、俺のこと"オトコ"として見てんだよな？」
『へぁっ......！？！？』
図星なことを言われて、変な声が出てしまう。
『え、あ......その、えっと......』
「なーんてな、冗談冗談。話変わるけど、実は俺、コンビニに傘買いに行ってたんだ」
恥ずかしくて何も言えない私を見かねた上鳴くんが、話題を変えてくれた。
そしてカバンの中から新品の傘を1本出し、私に差し出す。
「はい、Aちゃんの分」
『え、上鳴くんの分は？』
「俺は近いからへーきへーき」
いくら近いからと言ってもこのままじゃ上鳴くんは風邪をひいてしまう。そんなの嫌だ。
『あのっ、一緒に入って帰りません、か？』
「へ？」
......何言ってんだ、私！？恋人でもなんでもない人に"相合い傘"だなんて！しかも、この傘、上鳴くんが買ってきたやつだよ！？何を偉そうに！？
心の中で自分にツッコむ。
「俺とでいいの？」
『っ......はい』
随分小さな声で返事をした。
私は上鳴くんが買ってきた傘を開けた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 113人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雛(プロフ) - 上鳴勇香さん» はじめまして(^ ^)そう言ってもらえると嬉しいです！これからも精進させていただきますね！ (2018年2月18日 17時) (
レス) id: b31a2b7c08 (このIDを非表示/違反報告)
上鳴勇香 - もうすごくキュンキュンして、やばいですもう上鳴がかわいくて最高です！応援しています！ (2018年2月9日 16時) (レス) id: df69819376 (このIDを非表示/違反報告)
雛(プロフ) - 麗愛さん» はじめまして(^^) 応援のお言葉を貰えて嬉しいです！これからも精進させていただきますね (2018年2月7日 0時) (レス) id: b31a2b7c08 (このIDを非表示/違反報告)
麗愛 - 上鳴君大好きです！更新がんばってくださいね！ (2017年12月25日 12時) (レス) id: 89d093ef08 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：雛 | 作成日時：2017年9月28日 11時
