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くしゃりとかきまぜるように髪の毛をなでられる。
ジェシーくんの手は大きくてあったかい。
「ん、耳はなさそう」
「髪ぐしゃぐしゃになったじゃん」
「もとから寝ぐせすごいから変わんねえ〜」
「そういうのは彼女に言っちゃいけないの」
「そういうのもまとめて全部好きなのに？」
「……はあ」
脳内に響く甘ったるいセリフに飲み込まれそうになる。
視線も相まって溶かされそうだなんて、髪をいじり続けるジェシーくんをぼんやりと目で追って。
「ここもないね」
にくきゅー、とつぶやいて私の手を押し広げ、そのまま指を絡める。
「――っ、」
空いていたほうの腕が体とシーツの間に差し込まれ、つう、と背筋をなぞられた。
反射的に肩が跳ね、それを見て得意げに笑ったジェシーくんの手がゆるやかにくだっていく。
「くすぐったいってば、」
「Aもさっき俺に同じことしたでしょ」
もぞもぞ。
しっぽは〜、って今度は腰のあたりを行ったり来たり。
手つきがあやしい。
絶対にわざとだ。
「満足した？」
「ぜんっぜん」
「あんな話するんじゃなかった」
一向にどいてくれない手を掴んで引き剥がす。
のを、そんなのお見通しだという風に素早く捕らえあげるジェシーくん。
「ねえ、A寝言で気持ちいいって言ってたよ」
「……それ肉球触ってたときでしょ」
「ええ？ HEHEっ」
「本当にそろそろどいて？」
「じゃあ、ん。」
「え？」
「えじゃない、はやく」
ふっと低くなったトーン。
寝起き特有のかすれた声。
いつもより色っぽいそれが鼓膜を震わせた。
ん、ともう一度ねだって目を閉じ、軽く唇を尖らせる。
こうなるともう、多分テコでも動いてはくれない。
「まだ？」
「……うん。待て」
「待ってるよずっと！」
「じゃあおすわり」
「DAHAっ、なんでだよ」
あきれたように薄目を開けたジェシーくんが、ぐい、と身を乗り出した。
「ちょ、待てって言ってるじゃん！」
「いつまで？」
「私の心の準備ができるまで？」
「んHE、夜までお預けってこと？」
まあそれはそれで……、とかなんとか言い始めるから、たまらず首に手をまわして引き寄せる。
そっと離れれば、ゆるっゆるになった顔で「夜でもよかったのに」ってまたヘラヘラ。
こんな厄介な犬、手なずけられる日が来るんだろうか。
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作者名：びびたん
| 作成日時：2022年5月30日 20時
