年下、彼氏？ ページ12
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柔らかなぬくもりに、ふ、と目を覚ます。
はためくカーテン。
そこから射す光。
小鳥のさえずり。
まるで絵本の中のような、爽やかな朝だった。
スマホの時刻を確認しようと枕元をさぐる。
しばらく腕をごそごそさせて……、あれ、おかしいな。
昨日の夜このあたりに置いて寝たはずなのに。
一向に見つからないまま、寝返りをうちながらさらに遠くへと手を伸ばす。
ふわり。なにかの感触。
「……なに、これ」
「ん、……」
目の前で気持ちよさそうに、すうすうと寝息を立てて眠っているのはもちろんジェシーくんで。
別にこれはいつも通りだ。
どっちが家主なんだかわからないのも。
問題はそこじゃない。
今、この私の手が触れているものにある。
ジェシーくんの頭の上。
髪の毛とは違う、ふさふさとした毛並み。
それが、ふたつ。
「……みみ、」
ひとの、じゃない。
まさか。
なに言ってるんだ私、まだ寝ぼけてるのか。
おそるおそる指先で輪郭をなぞってみれば、ぴく、と小さく動いて、そのあたたかさがじんわり伝わる。
まるで、本物の。
「いぬ、……？」
は、と間抜けな声が出た瞬間、なにやら彼の腰のあたりでこれまたふわふわとしたものがゆらりと持ち上がる。
「しっぽ……」
――朝起きたら、恋人が半分犬になっていた。
なんて話、世界中で何人が信じてくれるだろうか。
落ち着け私。
一旦深呼吸しよう。すう、はあ。
寝ている間に一体ジェシーくんになにがあった。
昨日までちゃんと人間だったじゃないか。
てか、こういうのって普通猫耳が生えたりするんじゃないの？ 犬耳はあんま聞いたことない――
って違う、普通は生えないんだよ。
思考回路がバグりかけている私をよそに、相変わらず当の本人はぐうぐう眠りこけている。
ジェシーくんのことは前々から犬だなんだと揶揄してきたけれど、そんな、本当にそうなっちゃうなんて。
しかもよく見れば、両方の手のひらにはご丁寧に肉球までくっついている。
ふに、ぐに、……ぎゅむ。
あ、やば。これ永久に触ってられるな。
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作者名：びびたん
| 作成日時：2022年5月30日 20時
