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仁人母「もういいじゃない。早くご飯食べちゃって。父さんが支度してくれないから結局私が作ったから他が全然片付いてないのよ」
仁人父「わ、悪かったって…。明日はちゃんとするから…」
仁人母「本当かしら？熱っ！！」
その時、母はよそ見をしていたものだから、熱された鍋を触ってしまって火傷を負ったようだった。
母の指が赤く、水膨れになっている。
仁人「母さん大丈夫？！」
仁人母「大丈夫よこのぐらい」
仁人父「菌が入ると危ないぞ？氷は？」
仁人「氷なら！…氷…なら…？」
仁人母「仁人？」
仁人「あ、あぁ…いや…。それより消毒もしないと！なぁ！…えっと…」
駄目だ。
喉の辺りまで、誰かの名前がこみ上げてくるのに、結局分からないまま体から抜け出てしまう。
何なんだよ…
私は誰を呼ぼうとしてるんだ…？
いや…むしろ…誰かが私の事を…？
私は辺りを見回す。
そこには誰もいないはずなのに、まるでそこに誰かがいるような気配がずっと続いている。
だが、不思議と怖いという感じはしないのだが、何かわからない憤りは感じる。
それは、その気配に対してではなく、すっきりとしない自分に対してなのだが。
仁人父「ほら、蔵から氷持ってきてやったぞ」
仁人母「もう、大げさなんだから。でもありがとう」
父は持ってきた氷を布にくるむと、それを母の患部に優しく当てていた。
仁人父「これでよし。それより仁人、前に言ってた話、考えてくれたか？」
父のその言葉で、母の顔が少し曇った。
仁人「城下町へ行って、城の兵士になれって話？」
仁人父「そう。俺の昔の仲間が今兵士の教官をやっててな。お前ぐらいの若い奴が欲しいんだとよ」
仁人母「私は反対。もし戦争にでもなって、仁人が人殺しをするなんて、考えたくもない！」
戦争…
仁人母「そんな罪なこと、この子にはさせたくないわ…」
罪…？
その言葉に、私はさっきまでとは比べ物にならないほどの不快感に襲われて頭を抱えた。
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作者名：milkssss | 作成日時：2019年12月14日 18時
