検索窓
今日:8 hit、昨日:13 hit、合計:9,124 hit

ページ ページ36

時は(さかのぼ)り、雨が降りしきる森の中―。
勇斗は洞窟を後にすると、皆が食べれるだけの食糧(しょくりょう)を探して彷徨(さまよ)っていた。
と、いうのは口実で、ただ一人になりたかっただけかもしれない。
雨の音を聞きながら、勇斗は自分のすす汚れた手をじっと見つめていた。

こんな汚れた俺の手で、一体何ができるんだろう…

足元の崖の下には、水かさが増して勢いよく流れる川の音が響き渡っている。

「こんなところで、一人で何してるのかなー…?勇者君…」

勇斗「…!」

後ろで、聞き覚えのある声が聞こえる。
振り向いた先には、小さな子供の姿をした七つの大罪、スロースの姿が。
直接戦ったことはないが、こいつは瑞生の命を奪ったことのある実力者だ。

スロース「確か、君があの勇者の中で一番強いんだっけー…?」

勇斗「……」

スロース「そんなに黙りこくっちゃって、どうしたのー…?僕が怖いー…?」

勇斗「いや…残念だけど…お前の言う通り、俺は勇者の中でも最強の力を持ってる…。覚悟しろよ…」

スロース「ふぅうううん…。じゃあ、試してみてよー…その最強の力ってやつを…!!」

勇斗はスロースに向かってその能力を解放する。
空気を操り、酸素を奪い、酸化させていく。
が…。

スロース「どうしたのー…?何かしたー…?」

勇斗「……」

もちろん、そのすべてはスロースによって怠けさせられ、勇斗の力ですら何の意味もなさない。

スロース「残念だねー…最強の力ってやつ、見てみたかったなー…」

スロースはそう言って勇斗をあざ笑う。
しかし、勇斗の表情は何一つ変わらない。
ずっと、スロースの目を真っすぐに見ていた。

スロース「…。もう少しリアクションが欲しいんだけどなー…。まぁいいやー…。君と戦っても面白くないから、そろそろ死んでよねー…」

その言葉と共に、勇斗の胸元から見えない斬撃で血しぶきが上がる。

勇斗「…!」

スロース「びっくりしたー…?そんな驚くことでもないよー…」

スロースは自分の長い(そで)気怠(けだる)そうに持ち上げると、その袖をまくり上げ、中から赤茶けた自身の背丈以上の刀身が姿を現した。
 

次ページ→←前ページ



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (2 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
6人がお気に入り
設定タグ:M!LK , 勇者   
作品ジャンル:ファンタジー
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:milkssss | 作成日時:2019年10月28日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。