第七章 ページ7
小高い丘の上、黄昏色のローブを羽織った青年が一人、暗くなっていく西の空を見つめていた。
瑞生「…」
彼の手に持つ水晶玉も、黄昏の光を放っている。
仁人「どうした？また何か見えたのか？」
彼の後ろで仲間の一人が声をかけた。
瑞生「いや…。その逆さ。何も見えないんだ。この頃」
彼には少し先の未来を見る力があった。
突然、何の前触れもなく未来が見えるのだが、最近、いや、黄泉の世界へ旅立ってから、その力は忽然と息をひそめている様だった。
瑞生「まぁ、だからって何か困るわけでもないし、僕にとってみたら、見えないほうがいい時もある」
仁人「…」
瑞生「人は本来、先の分からない道を歩き続けるものだしね」
そうは言っていたが、少し寂しそうな表情が垣間見えたのを、仁人は見逃してはいなかった。
瑞生「ただ、この力で皆を守れないと思うと、ちょっとね…」
仁人「勇者の力と引き換え…ということなのかもな…」
瑞生「…引き換え、か…」
西の空に沈みゆく夕日を見つめながら、瑞生はそうつぶやいた。
瑞生「…！」
しかしその時、瑞生は何かを感じ取った。
いや、何かが聞こえた。
仁人「どうした？」
瑞生「いや、今、何か聞こえた…」
かすかに、聞こえる。
誰かが自分を呼ぶ声が聞こえるのだ。
瑞生「誰だ…？僕を呼ぶのは…」
しかしこの日、それ以上瑞生の耳にその声が聞こえることはなかった。
―
次の日。
柔太朗「夢で見た場所…？」
瑞生「うん。なんだか僕はそこに行かなきゃいけない気がする」
夜明けとともに目覚めた勇者たちを前に、瑞生は昨晩見た夢を思い出していた。
夢の中では、誰かが自分のことを呼んでいる。
その声に誘われるように歩いて行くと、ある村に辿り着くのだ。
そこに何があるのかは分からない。
しかし、自分を呼ぶ声はまだ聞こえる。
村をどんどん歩いて行くと、小さな洞穴が見えてきた。
そして、その洞穴を潜り抜け―
瑞生「そこで目が覚めた」
仁人「その声、昨日も聞こえたって言っていたよな？」
瑞生「うん。同じ声だった」
太智「でも、ただの夢だろ？そんな気にすることないんじゃね？」
瑞生「…。だと良いんだけど…」
柔太朗「瑞生には不思議な力があるからな。何かの前触れかもしれないぞ」
舜太「何それ？なんかよくないことが起こるん？！怖い…」
瑞生「…」
僕には、あの声は怖いという感じはしなかった。
むしろ…。
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作者名：milkssss | 作成日時：2019年9月23日 19時
