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勇者一行は、日暮れの森の中を一列に並んで足早に歩いていた。
すでに辺りは暗くなり、先頭の舜太が手に火の灯った松明を持って進行方向を照らし出していた。
仁人「この道…さっき通ったとこだな…」
仁人は、木に付けておいた傷をなぞりながらそうつぶやく。
瑞生「完全に迷ったみたいだね…でも、どうする仁人…。あまり無駄に歩いても、僕らまで消耗してしまうよ…」
仁人「しかし、この森で長居するわけにはいかない。それに、瑞生の水晶玉にいる柔太朗の容体も心配だ…。琉弥がついているが、ちゃんとした場所で休ませてやらないと…」
今この場には、仁人、瑞生、勇斗、太智、舜太しかいない。
柔太朗、琉弥の二人は、瑞生の水晶玉の中にいる。
なぜこのようなことになったのか、それは、この森に入ってすぐのことだった。
―
神隠しの村を旅立った勇者達は、あれから数日後、薄暗い不気味な森に差し掛かっていた。
森の木々には、蜘蛛の巣が大量にまとわりつき、カーテンのように枝から垂れ下がっている。
それはまるで森全体が巨大な蜘蛛の巣のようだ。
太智「気味悪いとこだなぁ…」
勇斗「なんか、出そうだよな…」
舜太「うん…。それに、この森に入ってから…なんか…」
薄暗いというのもあるが、さっきから何やら視線を感じる。
どこからか、誰かに見られている様な―。
瑞生「この森…何か沢山の気配が
仁人「魔力…?ふむ…。どうやらこの辺にも七つの大罪はいないようだし、早くこの森を抜けよう」
瑞生「そうだね。この森で野宿って言うのはちょっと…」
琉弥「俺も嫌だ…」
仁人達も、少し不気味に感じ身震いをしながらそう言った。
柔太朗「なんだ?怖いのか?勇者ともあろうものがみっともない」
しかし、柔太朗だけはあまり気にしていない様子で、氷の剣を使って蜘蛛の糸を切り裂きながら森を進んでいた。
仁人「さすが超クール勇者…」
舜太「柔様に苦手なものってあるんかな」
太智「ふふ、後ろから脅かしてやろうかな…」
瑞生「やめなよ、雑音勇者君。返り討ちに合うだけさ」
太智「わ、わかってるよ!…ん?!え?!ぎゃああああ!!!!」
その時だった。
急に太智は叫び声をあげながら、暴れ始めた。
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作者名:milkssss | 作成日時:2019年9月23日 19時