ページ ページ14
村の外れ、白い花が植えられていて、花弁はしぼんで開いていないが、辺りにはその花のほのかに甘い、いい香りが立ち込めている。
瑞生はその香りの中、一人歩いていた。
瑞生「この花、村の入り口に供えられていたのと同じ…」
「私、この花とても好きなんですよ」
すると、背後で声がして瑞生は振り返った。
そこには巫女装束を身にまとった神楽が立っていた。
神楽「えっと、瑞生さん、でしたっけ？」
瑞生「えぇ。そうですよ」
瑞生は神楽に向かって頭を下げると、少しはにかんでみせた。
神楽「さっきは、ありがとうございます。私を庇っていただいて」
瑞生「え？あぁ…。でも、彼はあぁ見えてとても良い奴なんですよ。そこだけは誤解しないであげてください」
神楽「うふふ、瑞生さんって優しいんですね」
神楽はそう言って微笑むと、珍しく瑞生は恥ずかしそうに顔を赤くして照れ笑いを浮かべていた。
瑞生「よく言われます」
神楽「あはは、瑞生さんって面白い人ですね」
そして、二人は白い花の咲く花壇の縁に腰かけて、お互いについて話し合った。
神楽「そんな大冒険をなさってたんですね。それでこの村も何とかしようとしてくださってるんですか」
瑞生「まぁ、そんなとこです」
神楽「変なことに巻き込んでしまって申し訳ないです」
瑞生「別に、こっちは好きでやってることなんで気にしないでください」
神楽「うふふ、やっぱり瑞生さんは優しい方ですね。やはりあなたなら、きっと…」
瑞生「え…？」
神楽「あぁ、いえ、何でもありません。それより、神隠しのことですが…」
瑞生「…安心して。きっと神隠しは僕達がなんとかしますから」
神楽「瑞生さん…。ありがとうございます」
そして、二人はお互い見つめ合いながら微笑んでいた。
太智「めちゃくちゃいい雰囲気じゃん」
舜太「なんか、見てるだけでキュンキュンするわ〜」
そんな瑞生たちの様子を、太智と舜太はこっそり隠れながら観察していた。
太智「邪魔しちゃ悪いし、そろそろ行くか」
舜太「そうやね…」
太智たちが立ち去ると、周りの花が一斉に開き始め、さらに甘くていい香りが漂い始めた。
神楽「あ、もうすぐ日暮れですね」
瑞生「え？本当だ。もうそんな時間か。そろそろ僕は戻りますね。仲間が待っていますから」
空を見上げると、日が落ちて茜色に染まっていく。
神楽「わかりました。すみません、お話につき合わせちゃって」
瑞生「いえ、好きでやってることですから」
―
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 8人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：milkssss | 作成日時：2019年9月23日 19時
