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琉弥「ちょ、ちょっと仁人君！まだ安静にしてなきゃ！」
仁人「私の体なんてどうでもいいさ…。それより、シリマルを探してくるよ」
そう言うと仁人は小さな小屋から出ていった。
琉弥「ま、待ってよ！」
仁人「…なら、手分けして探そう…。琉弥は向こうを頼む。私はこっちを探してみる…」
そう言って仁人は、目覚めてから一切琉弥と目を合わすことなく、背を向けて歩いて行った。
琉弥「じ、仁人君…」
―
時刻は昼ぐらいだろう。
太陽が真上を向いている。
記憶にあるのは夕刻だったため、どうやら一晩中寝ていたらしい。
久しぶりにそれだけ寝たかもしれない。
だけれど、体は重く、だるい。
頭もぼんやりとしていて、まるで脳内にうすい靄がかかっているようだ。
仁人「…」
仁人は地面を見つめながらふらふらと歩いていた。
昼間だというのに、やはりこの村には人影がない。
昨日言っていた通り、大人は皆家に引きこもり、子供は隠れて旅人から金品を奪っているのだろうか。
仁人「こっちか…」
仁人はそうつぶやくと、村はずれまでやってきた。
何も、ただぼんやり地面を見つめていたわけじゃない。
琉弥と別れた小屋から、仁人は気づいていた。
小屋の出入り口の地面から、何やら球が跳ねたような丸い跡と、コロコロと転がったような跡が続いているのを。
仁人はそれを追っていたのだ。
こんな跡をつけて動くのは、球の形をしたシリマルしかいない。
その跡を更に追うと、一件の大きな納屋が見えてきた。
仁人はゆっくりとその納屋の方へ近づく。
「××××」
すると、何やら話し声が聞こえてきた。
仁人は更に物音を立てずに、納屋に近づく。
その話し声は、どうやら納屋の裏手側から聞こえる。
仁人は、納屋の壁の角から、そっと裏手側の話し声に耳を傾けた。
「勇者、ココニイル！コノムラニ、キテル！」
片言で話す、この甲高い声は間違いなくシリマルだった。
仁人(誰と話してるんだ…？)
仁人は更に聞き耳を立てる。
「へえ、そうか…。へっへ。ようやくこの時がきたか…。ようやくあいつを…」
仁人はその声に、心臓が破裂するかと思うほど鼓動が高鳴った。
忘れもしない、掠れた固い声。
仁人(エンビー…！)
仁人は納屋の陰からそっと裏手を覗き込む。
そこには白く小さい丸い球と、黒いローブを身にまとった、エンビーの姿があった。
仁人(なぜエンビーとシリマルが…)
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作者名：milkssss | 作成日時：2019年9月9日 17時
