第二章 ページ30
舜太の村を出てから、すでに数時間が経っていた。
気を失って、うなされている舜太の呼吸が、どんどん弱っているのがわかる。
勇斗「まずいな…。舜太の体温が下がってきた…」
さっきまでは燃えるように熱かった舜太の体温が、急激に冷えだしているのが背中越しに伝わってきた。
しかし、問題はそれだけではない。
仁人「うぐっ…!」
舜太を背負う勇斗の後ろを追っていた仁人も、エンビー、グラトニーとの戦いの傷が癒えていない。
折れた左腕の激痛に耐えながら付いて行っていたが、その足取りも徐々に遅くなってきていた。
勇斗「仁人!大丈夫か?」
仁人「すまない…。だがもう私のことは良い。足手まといになるだけだ…。あとで追いつくから、早く舜太を医者の所に…うぐぁあ!」
仁人は腕の痛みに耐えきれず、その場でうずくまった。
その左腕は血まみれになり、折れた個所から下は、仁人の意思とは関係なくぶらりと重たく揺れていた。
勇斗「そんな状態で置いて行けるわけないだろ…!」
仁人「私なら…大丈夫…だから…」
勇斗「あぁ〜も〜!!」
勇斗は舜太の体と自分の体を、紐のようなもので結びつけ始めた。
仁人「え?や、ちょ!」
そして、勇斗は仁人をお姫様抱っこの状態で抱え上げる。
背中には、舜太を縛り付け、両腕には仁人を抱えた状態で、勇斗は再び走り出した。
仁人「や、待て待て!下ろせ!恥ずかしい!!」
勇斗「ぐおお!暴れんな!!これ以上動くとほんとに置いてくぞ!」
勇斗は歯を食いしばり、二人を抱えて走り出した。
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作者名:milkssss | 作成日時:2019年8月5日 16時