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四十二輪 ページ43

稲「悔しくなかったの?あんな事言われてさ!
俺は凄え悔しかったぞ…!」
あ「何で稲野ちゃんが悔しがるんよ。
言われたんは私ら二人ばい。」
明るく言ってみるが、稲野ちゃんはキッとこちらを睨み付けてくる。
稲「…嫌だったんだよ。
隣で聞いてるのに何も出来ねえ自分がさ…!」
私から見ても珍しい程、怒りで言葉を震わせる彼。
リナが、稲野ちゃんの手を両手で包み込む様に握る。
『ワタシ、悔しくないヨ!
イナノが言い返してくれたカラ!』
リナがあんな風に啖呵を切れたのも、
稲野ちゃんが先に言ったからなんやろうね。
彼女に手を握られたからか、優しい言葉を掛けられたからか。
彼は落ち着きを取り戻してきた。
何と言うか、リナって大人やな。
稲「……ごめん。勝手に一人でキレて。
何か、騒いだら喉渇くな!
お金渡すから、何か買ってきてよ。」
あ「今から!?もう授業始まるばい!」
稲「良いの。先生には俺が適当に何か言っとくから。
それに、一回パシらせてみたかったし。」
あ「私らは稲野ちゃんの舎弟やないけんな!」
半ば強引にジュース代を握らされ、二人纏めて教室の外に放り出された。
稲「授業の終わりまで、屋上にでも行ってろよ。」
後ろからそう聞こえたと思って振り向いた時に
見えた稲野ちゃんの笑顔が、どこか邪悪なものの様に感じた。

放り出された所で、何をすれば良いんやろか。
何も話さずに、沈黙が私らの前を通り過ぎる。
まずは、そうやな。
受け取ったもんは仕方無か。
あ「ジュース、買いに行こか。」
『Oui.』
授業開始のチャイムを聞かん様にして、
私らは購買に向かって足を進めた。
彼女にそっと手を繋がれる。無意識に力が籠もった。
そう言えば、さっきリナが稲野ちゃんの手を握った時は
何故か前までの時みたいな黒い靄っぽいのが出てこんかったな。
購買の自販機の前に立ち、託された五百円玉を投入口に入れる。
あ「選びや。私は後で良いけん。」
『Oui!』
ピッ、ガタン。
重さを感じる音が響き、落ちてきた物を取り出す。
私もそれに続いて、飲み物を選んだ。
稲野ちゃんのは…、これで良いやろ。
リナはローズヒップティー、私はカフェオレと青汁を持って、
今度は私ら二年の校舎…ピーチ棟の屋上に向かって歩き出した。

この高校の屋上は、施錠はされとらん。
やけん、好きな時間に誰でも自由に出入り出来る。
無用心やけど、それ程私ら生徒は信頼されとるって事やろな。
私らはせーの、と息を揃え、同時にそこに繋がるドアを開けた。

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螢羅(K-Ra)(プロフ) - 緑月翡翠さん» いつもありがとうございます!フランス語を取り入れるのは初めてだったのですが、書いていたら楽しくて楽しくて…!毎日更新、出来れば良いんですけどねえ…。貴重なご意見ありがとうございます! (2017年4月20日 7時) (レス) id: 575549c323 (このIDを非表示/違反報告)
緑月翡翠(プロフ) - 完結おめでとうございます!フランスや花言葉は私も大好きで、とても良かったです…!読者としては毎日更新が嬉しいのですが、ご多忙なようなので時間があれば、という形がいいと思います。次作も楽しみにしています!長文失礼しましたm(__)m (2017年4月20日 6時) (携帯から) (レス) id: b835eb55b1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:螢羅(K-Ra) | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2017年3月3日 20時

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