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十九輪 ページ20

あ「私は隣のレーン使うばい。
リナはこっちで泳ぎ。」
『D'accord!負けナイ!』
あ「…今は練習やし、戦う種目も違うけどな。
じゃあ先にこっちまで戻ってきた方が勝ちにしよか。」
『Oui!』
よーい、スタート!
笛の代わりにそう言って、同時にプールに潜り込んだ。
腕で水を掻き、足で水を蹴る。
すいすい泳ぎ進め、やがて反対側の壁が見えてくる。
壁にタッチし、息継ぎをしないまま向きを変える。
これが中々大変。
息継ぎついでに、ちらっと隣を一瞥する。
リナの姿が無い。かと言って水飛沫も無いし。
遅れてるんやろか?
と、その時。
ごつん。
頭に衝撃を感じ、思わず泳ぎを止める。
壁まではまだ距離はある筈やけど。
顔を上げると私の目の前に、
自分の頭を擦りながら楽しそうに笑うリナがいた。
瞬間、全てを察した。
あ「ズルしたな?泳いどる途中で
私の方のレーンに潜って来たやろ?」
『Hehe.楽シイ!』
照れた様に笑う彼女を見て、鼓動が乱れる。
私はそれを誤魔化す様に、彼女を諭した。
あ「…自分の練習せな、当日まで間に合わんくなるばい。」
『アルトと遊ぶノ楽シイ!』
あ「ここまで遊びやったんか…。」
練習のつもりではやってなかったんやな。

夕方頃まで練習し、やっとプールから上がる。
独特の気だるさが、私らの体を支配した。
着替えを済ませ、軽くボーッとなりながら更衣室を出る。
ほぼ同時にリナも出てきた。
…何故かお化けタオルをその身に纏って。
あ「着替えてるんやったらそれ取りや。暑いやろ。」
『Non,frais!涼しいヨ!』
その場でくるっと一回転し、ポーズを決める。
『バトル、フランス!』
あ「何年前の特撮ヒーローやっとるん。」
アンタと同い年の人間で分かる奴はおれんやろ。
お化けタオルはマントのつもりか。
『エゴサ、カクゴー!』
あ「それを言うならエゴス。っていうか私は敵側なんか。」
ダンスのダの字も無く、両掌でペシペシと叩かれる。
まあ、ここで踊られたら困るんやけど。
昔の特撮ごっこをしながら校門を目指す。
その間に軽音部室を見ると、電気は付いていなかった。
稲野ちゃんはもう帰っている様だ。
『Chaud.暑いヨー。』
あ「お化けタオル着て動き回ったらそりゃ暑いやろな。」
特撮ごっこに飽きたのか、タオルを脱いで水泳袋に押し込むリナ。
ふわっと広がる濡れた髪に、また鼓動が揺れた。
『?何見テル?』
あ「…何でも無か。」
視線を前に向け、彼女を視界に入れない様にする。
この後の時間、耐えれるやろか…?

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螢羅(K-Ra)(プロフ) - 緑月翡翠さん» いつもありがとうございます!フランス語を取り入れるのは初めてだったのですが、書いていたら楽しくて楽しくて…!毎日更新、出来れば良いんですけどねえ…。貴重なご意見ありがとうございます! (2017年4月20日 7時) (レス) id: 575549c323 (このIDを非表示/違反報告)
緑月翡翠(プロフ) - 完結おめでとうございます!フランスや花言葉は私も大好きで、とても良かったです…!読者としては毎日更新が嬉しいのですが、ご多忙なようなので時間があれば、という形がいいと思います。次作も楽しみにしています!長文失礼しましたm(__)m (2017年4月20日 6時) (携帯から) (レス) id: b835eb55b1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:螢羅(K-Ra) | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2017年3月3日 20時

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