[う.ば.ま.ろ]せめて、ただ愛させてよ。[学パロ/実.況.者]

四十三…。 ページ44

時間的に、そろそろ終盤かな。
そう思った頃に、タイミング良く最後のトークが展開された。
「えー早いもんで、次の曲がラストでございます。
ラストの曲は、とっておきのやつを持ってきましたよ！
聴いて下さい、＜優しさの雫＞。」
お、俺の好きなバンドの曲だ！
まさかここで聴けるとは思わなかった。
見事に再現された世界観に、俺らを含めた観客達は
瞬く間に取り込まれていった。
やがて消え入る様にアウトロが流れ、曲が終わりを迎えた。
ボーカルが一言、ありがとうございましたと告げ、
バンドメンバー全員がお辞儀をしてその場を離れた。

………アンコール！アンコール！アンコール！
どこからともなく、拍手の音と共にアンコールが叫ばれる。
確かに、このまま静かに終われる訳も無いでしょ。
隣で一緒にそれを叫ぶゆかりさんの声が、
何気に一番良く通っていたと思う。
そして、彼らが舞台上に戻ってきた。
何度目かの割れる様な拍手と歓声。
「ありがとうございます。まさかアンコールを頂けるとは。
じゃあ、本当に最後ですよ？」
歓声が、そこかしこから響き渡る。
「やっぱりクリスマスなんでね、
最後はクリスマスソングで決めたいと思います！
それでは本当に最後の曲、行きます！
＜Thank You Merry Christmas 特別バンドアレンジバージョン！＞」
キーボードの後にすぐドラムが入り、
更にボーカルが色味を足す。
元の可愛らしい音使いに合わせて光る彼ら独特のアレンジは、
聴いていてとても心が躍る。
元の曲には無かったギターやベースの音が、
上手く前線に立っていて面白いぐらいに聴き心地が良い。
やがて曲も終わり、ライブは終焉を迎えた。
と「ありがとうございましたー！
格好良い演奏を聴かせてくれたハイスタの皆さんに
もう一度大きな拍手！」
俺らの拍手に、はにかみながら会釈をするハイスタのメンバー。
今回のパーティは、クオリティが高いな。
そう思わざるをえなかった、見応えのあるバンド演奏だった。

ライブの終わりの更に後。
俺とゆかりさんは、ひとけの無いクッパ棟の校舎裏に来ていた。
『すっげえ楽しかったな！
最初から最後まで聴き惚れちまってたぜ！』
う「楽しんでくれて良かったです。
正直、喜んでくれるか分かんなかったから。」
『当たり前だろ？一番の友達であるあんたが、
わざわざチケットを用意してくれたんだ。
楽しまねえ訳無えじゃん！』
やっぱり、友達止まりなんですね。
俺は彼女の手を、自分の手と絡め合わせる様にそっと握った。

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