タイミング ページ12
かっちゃんが教室に入ってきた。今日はいつもより遅い。気まずくて顔を背けていると、痛っという出久君の声が聞こえた。
驚いて顔を上げると、かっちゃんが出久君を殴ったようだった。
『ちょっと!』
立ち上がると、かっちゃんが今までで見たことないような顔をしていた。睨む、なんてこと今までなかったのに。表情も険しい。思わず足が竦む。
勝己「うるせぇ、てめェには関係ねーだろ」
私の知ってるかっちゃんじゃない。私、嫌われちゃったのかな。なんだか悲しくなって、何も言わずに席に座った。
それから、かっちゃんと一切話さないということ以外はいつも通りに過ごした。時間が過ぎるのはあっという間で、放課後になった。
お茶子ちゃんに近くのカフェで相談に乗ってもらえることになった。
暫くクラスのことなどを話した後、いよいよ本題に切り出した。
『お茶子ちゃん、相談っていうのは………』
話そうとすると、近くからかっちゃんとお母さんの声が聞こえてきた。
勝己「んでババアとカフェ入らなきゃいけねーんだよ」
光己「こら!ババアとか言わない。仕方ないでしょー、ここのスイーツ二人で入ると割引なんだから。しかも今日まで」
思わず息を呑む。お茶子ちゃんは不思議そうに私を見ている。
光己「それで、Aちゃんとはどうなの?」
勝己「んでいきなりAが出てくんだよ。何もねーよ」
光己「またまたぁ」
勝己「友達として好きなだけだ」
友達として、好きなだけ………。そうか、私1人で舞い上がってたんだ。ばっかみたい。思わず目から涙がでそうになるのを堪える。
お茶子ちゃんの手を引いて、急いでお店から出ていった。
公園のベンチに座ると、安心感からか涙が溢れる。
お茶子ちゃんは戸惑いながらも背中をさすってくれた。
『私……私ね、かっちゃんのこと、好きなの。ううん…………好きだったの。ふられちゃった。でも良かった。これで関係壊れることはないね』
お茶子「Aちゃん……、辛かったね」
その一言で、我慢していた嗚咽が漏れ出た。
暫くお茶子ちゃんに慰めてもらい、涙も幾分か収まった。
『ありがとう、お茶子ちゃん。出久君と上手くいくことを願ってるよ』
お茶子「なっなんでそれを!?」
『大丈夫、今日のことは二人だけの秘密だよ』
続く
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作者名：瑞穂 | 作成日時：2020年9月17日 18時
