9-3:38度の爆弾魔 ページ17
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お昼が過ぎ、数時間経って日が沈んでも起きない彼女を起こしに寝室へ向かうと耳に届いたのは何故か啜り泣く声。
「Aちゃん?どーした??しんどい?」
風邪で辛くて起きたのかと近寄って声を掛けてみたけど反応はなし。まだ寝てるみたい。
『……けて。』
微かに聞こえる声を拾おうと耳を近付ける。
『たす…けて。』
Aちゃんが泣いてるの、初めて見た。
簡単に泣くような子じゃないと思ってたから、やっぱりなにかあるんだと不安が押寄せる。
何かに怯えるように布団を握りしめ、助けてと苦しそうに呟く彼女のそれは悲鳴にも似た叫びに聞こえた。
止めどなく流れてくる涙を指で拭って軽く彼女の身体を揺する。
「Aちゃん、大丈夫だよ。大丈夫だから、Aちゃん起きて。Aちゃん。」
夢の中じゃ助けられないから、せめて夢から覚めさせてあげないと。
はっと目を覚ました彼女はゆっくり身体を起こして不規則な呼吸を整えている。
脳が覚醒したのか俺の顔を見るなりあれ、なんで伊吹さんがいるの?、なんて首を傾げた。
「お腹空かない?ご飯、出来たけど食べる?」
『……食べる。』
ふわっと笑ったAちゃんを見て、安心で口元が綻ぶ。
冷たくて暗い場所に連れて行かれたことがあるって前に言ってたけど、それと何か関係してるんだろうか。
俺の不安を他所にちびちびと美味しそうにうどんを食べる彼女。
『お素麺美味しい。』
「ふっ、それうどんだからね?」
素麺とうどんを間違えるとかまだ寝惚けてるな。
そう思うと可笑しくって笑いが込み上げてくる。
『家でこうやって自分の為に作ってくれたご飯食べるの久しぶりです。』
幸せそうに目を伏せて美味しい、美味しいと連呼するAちゃんになんなら毎日作ってあげるよ、ってプロポーズ紛いのことを言いそうになったけど飲み込んだ。流石にダメだろって。
なのに
『毎日伊吹さんの手料理食べたいぐらいです。』
言っちゃったよこの子。
『伊吹さん、伊吹さん。』
「今度はなーに?」
『今晩泊まっていきます?』
再び爆弾発言。
予想外過ぎて、食べかけのうどんが出そうになった。
「え、本気?」
『んふふ、冗談に決まってるじゃないですか。』
「このやろ。」
あぁ、もう、ほんと心臓に悪い。
【38度の爆弾魔】
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優(プロフ) - 志摩さんverも見たいです。 (12月13日 8時) (レス) @page9 id: 3d15647872 (このIDを非表示/違反報告)
A(プロフ) - 続き楽しみにしてます! (2022年3月10日 4時) (レス) @page43 id: c5820b78bf (このIDを非表示/違反報告)
優(プロフ) - 終わり!?めっちゃ気になる(;´Д`) (2021年12月4日 18時) (レス) @page43 id: da421f7cc6 (このIDを非表示/違反報告)
Ylixe(プロフ) - 続き楽しみにしてます! (2021年1月10日 20時) (レス) id: 261d3e9d65 (このIDを非表示/違反報告)
しおらん(プロフ) - 凄くいいです!このパターン初めて読みました!久住側で伊吹に好かれて付き合って…最高ですね!続きもっと沢山読みたいです!更新頑張ってください!楽しみにしています! (2020年12月28日 2時) (レス) id: 7c779db0ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:名無 | 作成日時:2020年9月26日 13時