No.19 ページ19
＊
「んで……勝手に違うとこ行ったんだよ」
「勝己君……」
抱き締めるのはやめないが、頭を上げて私と目線を合わす彼、勝己君。
眉間に皺を寄せ、目尻にはまだ微かに涙が溜まっている。
幼い頃の面影はあるが、初めて見る成長した顔と涙の表情。
胸がきゅっと締め付けられた。
「何で俺には言わなかったんだよ……」
きっと、出久君から私が凝山中学校に進学したことを聞いたのだろう。
二人とも、れっきとした私の幼馴染なのに、彼には伝えず出久君にだけ話したから、悲しみや怒りを感じるのは当たり前だ。
私は、配慮に欠けていた。
「ごめんね、勝己君。本当に、君には申し訳のないことをしちゃったな……」
「っ!!」
「……ごめんなさい、勝己君」
彼の目をしっかりと見て、誠意の限りを尽くして謝罪する。
それから、今度は私の方から勝己君の背に腕を回してぎゅっと抱き締める。
ああ、本当に成長したなぁ。
腕を回した背中は引き締まっていて、顔を押し付けた胸板は硬かった。
先程まで彼は運動をしていたからか、汗の甘い香りが強く鼻をくすぐる。
「……いや、俺こそ悪ぃ。取り乱した」
「ううん、私のせいだから」
そして、彼は再度頭を首あたりに数秒埋めてから、私を解放した。
私も彼に続いて腕を解く。
それから彼は、私の手を掴んだ。
「家まで送る」
「……ありがとう、勝己君」
私は彼の手に導かれるまま、帰宅した。
* * *
翌日、午後。
「じゃあな、雪園」
「うん。また明日ね、焦凍君」
生徒昇降口の下駄箱で靴を履いていた私に、焦凍君が声をかけて西門へ向かう。遅れて靴を履き終わった私は、反対側の東門へ歩く。
私のように電車通学の生徒は、駅のある方角の東門から出入りしている。
いつものように東門を抜ける時、最近聞いたばかりの声で名を呼ばれた。
「A」
「え、勝己君？」
昨日の夕方に見たばかりの彼が、東門の柱に寄りかかって立っていた。
「……帰るぞ」
「？ ああ、うん……」
まさかとは思うが、ここで待っていたのだろうか。
「ケータイ」
「え？」
「いいから出せ」
暫くお互い無言で歩いていたら、いきなりそう言われたので、取り敢えず従って通学鞄からスマホを取り出し、彼に渡した。
使うのかと思い、パスワードは解除しておく。
少しいじってから返される。
「LINE登録しておいた」
彼が言った。
＊
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ハん - 本当に素敵な作品です❣️私涙脆いので泣けてきちゃいました。続きまっってます❗️ (10月18日 20時) (
レス) @page26 id: add9586351 (このIDを非表示/違反報告)
ここ(プロフ) - このお話大好きです！個性がエルサみたい！かわいい！ (2022年1月13日 18時) (レス) @page2 id: ff535d7292 (このIDを非表示/違反報告)
サブとバラ(プロフ) - いちごさん» コメントありがとうございます！こんなに褒めていただけるだなんて、ものすごくうれしいです。更新頑張ります！ (2021年5月13日 22時) (レス) id: 1484373297 (このIDを非表示/違反報告)
いちご(プロフ) - 素敵な作品ですね！夢主の儚い感じと誰でもやり過ぎなく平等に接している感じが好きです！慕ってくれている人がいるって言うのも素敵だと思いました！更新頑張って下さい！！ (2021年5月4日 18時) (レス) id: a2b06cd108 (このIDを非表示/違反報告)
サブとバラ(プロフ) - アニオタさん» 返信が遅れてしまい、申し訳ありませんでした……。コメントありがとうございます！私自身、エ○サが大好きですので、そこからオマージュさせていただいたのです。鋭いですね！本日から更新スタートいたしますので、これからも応援よろしくお願いいたします！ (2021年4月1日 10時) (レス) id: 4ca3bc2d2a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：サブとバラ x他1人 | 作成日時：2019年10月21日 23時
