孤立4 ページ7
気がつけば帰路に着いていた。
教科書やらで重くなったカバンを体に貼り付けるようにして無我夢中に走った。
荷物を詰め込んだ記憶すらない。
あれだけ気をつけていたのに。
あの時間だけは、あの人との時間だけは失いたくなかったのに…
もう、あんな幸せな時間は訪れないのだろう。
家が見えてきた。やっと着いた…
その時不意に腕を掴まれた。
「あなた!!」
もう聞くことは無いと思っていた、唯一の救いの声。
「先生っ…」
あれだけもう関わるまいと決めたのに、いざ目の前にすると 欲が出てしまう。手を伸ばしたら掴めそうだと錯覚してしまう。
「私、先生に迷惑かけ」
「迷惑じゃない!」
驚いた。普段は聞き返さないと会話が成立しないような人なのに勢いよく言葉が口から出てきている。しかも声量も大きい。
「俺は…あなたが好きだ。だから毎日昼を一緒に食べていた。教師と生徒という間柄にも関わらず、ここなら大丈夫だと慢心していた。だがその結果あなたを傷つけてしまった。本当に申し訳ない。」
もうこの言葉が嬉しくて嬉しくて この後私が何を言ったかは覚えていない。
ただ「一緒に住もう」という提案に乗ったことだけは覚えている。
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「…行ってくる」
「行ってらっしゃい」
毎朝重い足取りで学校に向かい、屍のようにただ時が過ぎるのを待つだけの生活から
毎朝送り出し、帰りを待つ幸せな生活に変わった。
あれからもう学校には行っていない。
「あなたを傷つけるだけの場所にはもう行かなくてもいい」
と言ってくれたのも大きいが、私自身もうあの地獄に関わりたくないと思っていたので、甘えるだけ甘える事にした。
ここにいれば、自分を傷つける物は何も無い。
私を否定するものも無く、蔑まれることも無い。
そんな世界を1度知ってしまったら 最後 抜け出せなくて、自分でも良くないと思いつつも ずっとこのぬるま湯につかっていたいと思ってしまう自分もいる。
極めつけには 義勇が「どこにも行かないでくれ」と言うものだからもう私はこの世界に引きこもる運命なのだという気すらしてきた。
これが合っているかなんて知ったことではない。
ああでもきっと私は 幸せなのだろう。
少しでも疑問を抱く私がおかしいのだ。
きっとこれが望んでいた幸せ なのだから。
でも何故先生は私の家が分かったのだろう?
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作者名:みお | 作成日時:2019年12月2日 20時