95話 ページ6
「もういいの？鶴丸さん」
「ああ、いいんだ。元々自分の荷物はこの身ひとつだからな」
鶴丸は足を止めずに
乱の問いに微笑みながら応えた。
頼まれ屋に帰還してから、彼は篠木さんと契約を結び直した。既に意思が固まっていたからだろう、契約はなんの滞りもなく済んだ。もう彼の主は、私ではない。
「此処が現代へと向かう門か？それにしては小さいなぁ」
「目立つとよくないからね。そうか、岩融が来るのは初めてか」
現代へと向かうことの出来る門の、一つに辿り着いた。意外と小さな門扉は今日もしっかりと境界を守っている。此処から彼らは一度現代に帰るという。
やはり新本丸の準備には少し時間がかかる。それに、審神者業を再開するにあたって、現代を引き払う準備をする必要もあるのだ。
「別れの時が来たようだな、鶴丸」
「ああ。またいつか会えるさ、岩融。それから……前の主の、きみにも」
「そうだな。ははは、前はきついことを言ったが、……寂しいな。鶴丸、お前も確かに頼まれ屋だったんだから」
「そりゃあ、俺はきみに育てられたようなものだからなあ。文句なしで本当に楽しかった。……有り難うな」
静かな声でそう呟いて
彼はさっさと私に背を向けた。
乱の小さな手を握り、篠木さんの背中に手を添えて、彼は光を湛え開いていく扉にその金色の瞳を向けた。これから彼は3人で新しい道を歩むのだろう。
もう私達の助けなど必要ない。
篠木さんはきっといい審神者になると私は改めて思った。それと同時に……鶴丸も、誰より強い刀剣男士になるのかも、しれないなぁ。
「二人とも、じゃあな」
「頼まれ屋さん、岩融さん、ありがとね！」
「お元気で!!ありがとう、ございました！」
3人の振り返った顔が、光の中に一瞬見えた。
しかし門扉は直ぐに重い音をたてて閉じた。
此処には、私と岩融しかいなかった。あれほどの存在感を持っていた、驚きを追い求める白い刀剣男士はもういない。
彼のためにと、望んでいたことではあった。それでも思ったより心の隙間が大きいのは、私が思うよりも彼の成長速度が著しかったからだろう。
彼が居ることを、きっと私達も楽しんでいたのだ。
「鶴丸国永は、とても強い刀だったな」
「……彼のことはその一言で充分だな。
帰ろうか、岩融。久々に、ふたりきりだ」
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小生(プロフ) - 久しぶりにこのサイトを覗かせてもらい、こちらの作品の新しい話を読むことができてとても嬉しかったです！これからも応援しております！ (2021年10月7日 21時) (
レス) @page25 id: 622fb3de14 (このIDを非表示/違反報告)
こばひな(プロフ) - アヅマさん» 頑張ってください！！応援してます！！！ (2019年5月9日 22時) (レス) id: 36295a5c6d (このIDを非表示/違反報告)
アヅマ(プロフ) - こばひなさん» コメントありがとうございます。当方忙しく更新が滞っていて申し訳ないです…。とにかく完結までは走り続けるので、店主の活躍を温かく見守って頂けると嬉しいです！ (2019年5月9日 1時) (レス) id: 7a303d5d51 (このIDを非表示/違反報告)
こばひな(プロフ) - この続きが気になります 続きをつくってもらえたらうれしいです (2019年5月6日 15時) (レス) id: 36295a5c6d (このIDを非表示/違反報告)
アヅマ(プロフ) - 雪音さん» コメントありがとうございます。面白いと言って頂けたようでうれしいです！時にリクエストとはどのようなリクエストでしょうか…？まずそれをお聞きしておきたいと思います。お願い致します。 (2019年4月6日 0時) (レス) id: 7a303d5d51 (このIDを非表示/違反報告)
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