112話 ページ26
同田貫正国は、とんっと足場を蹴り上げた。
舞う砂埃と共に、耳元で風が吹いた。
咄嗟に前に出て、刀を出す。刀身が触れる耳障りな音と共に、気配なく現れた同田貫が無邪気な笑みを見せた。
「へへへ。今の、よく見切ったぜ。アンタぁ、つよいな、へへ」
「クッ……！そりゃあどうも！」
同田貫の刃先は明らかに三日月を狙っていた。三日月がこの中で一番練度が低いことは既に見通されているのだろう。それなら。
「岩融、三日月殿！先を急げ！此処は私に任せてくれるか！」
「主……！」
「必ず生きて帰る。だから」
少しの沈黙の後、足音が去っていく。
嗚呼、岩融の声がひどく震えていた。振り返れなかったから、どんな表情をしていたかは分からなかったな。悪いことをした。
けれど、ここで彼と別れるつもりはない。
絶対に、帰ってみせる！
「おれも舐められたもんだな？おい。ちょーっとばかしつよいおなごひとりで、おれごとき、事足りるってか。おれはあのナギナタがいい。アイツ、つよいだろ」
「私では不足か？」
「だってつまんねえよ。すぐ終わっちまうんだもん」
同田貫は口をとがらせ、手足をばたつかせる。その仕草は一見かわいらしいが、決して気は抜けない。その小柄な体躯から発せられる圧は、並の武士でも及ばない。
「あ、そうだ！」と同田貫が声をあげる。少年のようなかわいらしい笑顔を見せながら、彼はきゃらきゃらと笑った。
「へへへ、なあ、アンタを殺せば、弁慶のナギナタ、もどるよな？だってアンタぁ、アイツのあるじなんだろ！？へへへ、いいアイデアだなあ！」
「……」
「へへ、ふふ……あのナギナタ、どんだけつよいんだろーなァ……へへ、気になるなァ……」
舌なめずりをして、同田貫は自らの本体をひょいと、軽い調子で持ち替える。
……消えた。
その何気ない一瞬の動作に、一瞬だけ惹きつけられた隙を使われた。もう既に同田貫は私の視界には入らない。気配すらないのだ。捉えきるのは至難の業だろう。
ならば考えろ。思考を一瞬で読み切れ。
絶対に此処で死ぬわけにはいかないのだ。
どこからくる？
どこで受ける？
...
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小生(プロフ) - 久しぶりにこのサイトを覗かせてもらい、こちらの作品の新しい話を読むことができてとても嬉しかったです！これからも応援しております！ (2021年10月7日 21時) (
レス) @page25 id: 622fb3de14 (このIDを非表示/違反報告)
こばひな(プロフ) - アヅマさん» 頑張ってください！！応援してます！！！ (2019年5月9日 22時) (レス) id: 36295a5c6d (このIDを非表示/違反報告)
アヅマ(プロフ) - こばひなさん» コメントありがとうございます。当方忙しく更新が滞っていて申し訳ないです…。とにかく完結までは走り続けるので、店主の活躍を温かく見守って頂けると嬉しいです！ (2019年5月9日 1時) (レス) id: 7a303d5d51 (このIDを非表示/違反報告)
こばひな(プロフ) - この続きが気になります 続きをつくってもらえたらうれしいです (2019年5月6日 15時) (レス) id: 36295a5c6d (このIDを非表示/違反報告)
アヅマ(プロフ) - 雪音さん» コメントありがとうございます。面白いと言って頂けたようでうれしいです！時にリクエストとはどのようなリクエストでしょうか…？まずそれをお聞きしておきたいと思います。お願い致します。 (2019年4月6日 0時) (レス) id: 7a303d5d51 (このIDを非表示/違反報告)
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