111話 ページ25
砂埃が幾分か収まったのちに、同田貫正国は姿を現した。
デスクが山のように積み重なる中、彼はその山の一番上に腰かけていた。
岩融がふっと息をのむ音が聞こえたのは、目の前で対峙する刀の体躯が、我々の知っているものとは随分と異なっていたからだろう。
ぎらぎらと光る半月のような瞳だけはそのままに。柄の短い懐刀を握って、小さな体に見合わない殺気を発しながら、彼はこちらを睨みつける。
その同田貫正国は、『短刀』だった。
黄緑色の瞳をぎらつかせ、彼はにたりと口角を上げる。
とんっ、と状況に見合わないかるい音と共に、同田貫は机の山を蹴り上げた。がらがらどしゃあんと轟音が鳴り、視界がまた砂埃に襲われる。
思わず目元を抑えた瞬間、首筋に何かを感じた。
「……ッ」
満月のような瞳と、ばっちり目が合った。振り向きざまに翳した刀が耳障りな音を立てる。……成程、彼を同田貫正国であると思っちゃいけないみたいだ。少なくとも打刀の彼にできるような戦い方では、ない。
岩融が薙刀を一振りしたが、やはりその大ぶりの一撃には捕まらず、彼は三日月に向かって走っていった。すかさず割り込んで刀を引いたが、それもかわされた。
一転。
後方に下がった彼は、ギリギリと歯を鳴らして口を開いた。
「アンタぁ、おなごのくせにィ、おれのじゃまを、するな」
「ほう、口が利けるのか、小さき同田貫正国よ」
「おうおう、口くらい、きけるぜ。弁慶のナギナタ。へへへ、へへ。きける」
彼はけたけたと大口を開けて笑う。
……完全に誰かに支配されている、という訳じゃないみたいだ。少なくともこの彼は自分の意志で、此処に居た人たちと、此処に来た人たちを斬って回っている。
「……きみは、本当に同田貫正国なのか？正真正銘、天下一の剛刀である同田貫だと？」
「そうだぜェ、おれは同田貫正国だ。へへへ、ちいとばかしちっさいけどな」
「ならばどうして、天下一の刀が、こんな」
「それはいえねぇなあー」
私の言葉を遮り、彼はニコニコと笑う。まったく同田貫らしくない、だが短刀と言われれば納得できるような、無邪気な笑い方だった。
短刀を自らの首元に当て、見慣れない彼は瞳を細めた。
半月が、三日月になる。
「どうしてもききてーなら、ほかにきけ。
おれからにげきれたら、ってはなしだけどな」
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小生(プロフ) - 久しぶりにこのサイトを覗かせてもらい、こちらの作品の新しい話を読むことができてとても嬉しかったです！これからも応援しております！ (2021年10月7日 21時) (
レス) @page25 id: 622fb3de14 (このIDを非表示/違反報告)
こばひな(プロフ) - アヅマさん» 頑張ってください！！応援してます！！！ (2019年5月9日 22時) (レス) id: 36295a5c6d (このIDを非表示/違反報告)
アヅマ(プロフ) - こばひなさん» コメントありがとうございます。当方忙しく更新が滞っていて申し訳ないです…。とにかく完結までは走り続けるので、店主の活躍を温かく見守って頂けると嬉しいです！ (2019年5月9日 1時) (レス) id: 7a303d5d51 (このIDを非表示/違反報告)
こばひな(プロフ) - この続きが気になります 続きをつくってもらえたらうれしいです (2019年5月6日 15時) (レス) id: 36295a5c6d (このIDを非表示/違反報告)
アヅマ(プロフ) - 雪音さん» コメントありがとうございます。面白いと言って頂けたようでうれしいです！時にリクエストとはどのようなリクエストでしょうか…？まずそれをお聞きしておきたいと思います。お願い致します。 (2019年4月6日 0時) (レス) id: 7a303d5d51 (このIDを非表示/違反報告)
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