103話 ページ16
光が空間に差し込んだ。
暗闇に慣れた目を瞬かせて、向こう側に飛び込んだ。
すたんとどこかに着地することに成功した瞬間から、じわじわと眩しさに飲み込まれた視界が回復していく。太郎太刀と青江が見えてひとまずは安心したが、彼らの表情は厳しかった。
完全に視界を取り戻した瞳は、とんでもないものを映していたのだ。
「……時間遡行軍！いや、幽霊か？」
「ざっと500、いえ、600……いずれにしろ、途方もない数の敵、ですね」
「検非違使もいくらか見える。敵は見境がないらしいね」
私達の一行は、着地した場所を中心に、妖の気を纏わせる時間遡行軍達に囲まれていた。妖の気が空気中を埋めつくす。後は壁、前は敵。逃げ場はなかった。月明かりがぼうと彼らを、私達を照らした。
あの目くらましは時間稼ぎだったらしい。
岩融の顔が脳裏をよぎる。なるほど、これが走馬灯かな。どうやら今回ばかりは、心の底から私は生きて帰ることを諦めたようだった。いや、諦めてはいないというべきか。
「……いいさ、妖とは徹底的に縁があるようだからな」
「！君、何をする気だい」
「二振りとも、私に構わないでいただきたい」
正直死ぬ気は毛頭ない。しかし生き残る可能性は低い。私はいくらか普通の人間よりは頑丈だけれど、この数を始末できるかは分からなかった。
だが、分からないことだらけのこの任務でも、ひとつ。言い切れることがある。
この二振りだけは、帰さなければ、ならない。
それだけは。
「それは、……駄目です」
「君……この、僕に、なんの仕事もさせない気かい」
「ええ。止めないで、くださいッ！」
彼らの制止を振り切って、刀を振り上げて走った。あのままでは私の決意も揺らぎそうだったからこれで正解だ。
単身特攻してくる私に、敵はわずかに身じろぎしたようだった。それなら良い！向かってくる敵を、斬る、斬る。ひとり、ふたり、さん、し、ごろくしちはち、ああ数えきれない
「ぐ……！？」
腹に深く切り込まれ、意識が吹き飛びそうになる。
やはり此処で死ぬのか！
身体中から汗が噴き出る。岩融の笑顔がまたよぎる。なんてこった、私はここでも揺らがない。岩融はそれほど大切な存在なのだと、こんなところで気がついた。
ああ。
じゃあ、猶更、私は死ねないじゃないか。
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小生(プロフ) - 久しぶりにこのサイトを覗かせてもらい、こちらの作品の新しい話を読むことができてとても嬉しかったです！これからも応援しております！ (2021年10月7日 21時) (
レス) @page25 id: 622fb3de14 (このIDを非表示/違反報告)
こばひな(プロフ) - アヅマさん» 頑張ってください！！応援してます！！！ (2019年5月9日 22時) (レス) id: 36295a5c6d (このIDを非表示/違反報告)
アヅマ(プロフ) - こばひなさん» コメントありがとうございます。当方忙しく更新が滞っていて申し訳ないです…。とにかく完結までは走り続けるので、店主の活躍を温かく見守って頂けると嬉しいです！ (2019年5月9日 1時) (レス) id: 7a303d5d51 (このIDを非表示/違反報告)
こばひな(プロフ) - この続きが気になります 続きをつくってもらえたらうれしいです (2019年5月6日 15時) (レス) id: 36295a5c6d (このIDを非表示/違反報告)
アヅマ(プロフ) - 雪音さん» コメントありがとうございます。面白いと言って頂けたようでうれしいです！時にリクエストとはどのようなリクエストでしょうか…？まずそれをお聞きしておきたいと思います。お願い致します。 (2019年4月6日 0時) (レス) id: 7a303d5d51 (このIDを非表示/違反報告)
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