100話 ページ13
「おや？」
私を探していたらしい青江は案の定、太郎太刀を見て首を傾げた。
太郎太刀が自己紹介をすると、彼はいつもの妖しい笑顔で微笑んだ。楽しくなってきたね、そう呟いて青江は目を細める。
「此処に来る途中で血の匂いを嗅いでね。太郎太刀さん、君さえいればそこにまた辿りつけそうだ。きっとそれが敵の本陣だろう。此処を押さえればこの雰囲気も消え去るだろうね」
「……私は分からなかった。流石青江さんだ。
太郎太刀さんは、いかがですか？」
「はい。此処まで来ればそれはもうはっきりと。私はその類いのものには敏感ですから」
歩き出した太郎太刀を先頭に、青江、私、と並んだ。
それなりに気配はすれど襲いかかってこないのは、本陣で一網打尽にしようとしているのかもしれない。それはそれで結構。私も青江も十分休息をとった。
太郎太刀には……下がっていてもらうしかないが。だとしてもこれが本当に幽霊の仕業ならば、私よりも確実に役に立つはずだ。
「む……此処、でしょうか」
数分歩いたのち、太郎太刀はぴたりと立ち止まった。
そこには赤い大きな鳥居がそびえ立っていた。
「ふうん……なるほどね」
「どうしましたか、青江殿」
「いやいや、凄いな、と思ってね。ほら、この鳥居。僕が通りかかったときは、見かけなかった。ふふふっ、確実に此処だ。なんて気持ちいいんだろうね」
青江は心底楽しそうに微笑んで、足取り軽く私を追い越した。太郎太刀の隣に立つ。
両端を森に挟まれた赤い鳥居の奥は真っ暗だ。風がひゅうと駆け抜け、木々がざわめく。何かいる。ぞくりと背中が粟立った。別に幽霊は怖くはないが、ここまでお膳立てされると不安になる。
「……此処からは、三人で」
「ええ。私は実戦に覚えがありませんから」
「いったい誰が待っているんだろうね、この奥に」
岩融の顔をふと思い出した。
彼も決して縁起のいい刀ではなかったが。
ああ、もしも此処で私が死ぬならば、きっと彼は来てくれる。別の仕事をほっぽりだしてまで。そうして、私を看取ってくれる。彼はきちんと、泣いてくれるだろうか。
……妙だな。不吉なことを考えたらやっと覚悟が決まった。
靴底で、石畳をカツンと鳴らす。
私たち三振りは、鳥居の向こうへと一歩踏み出した。
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小生(プロフ) - 久しぶりにこのサイトを覗かせてもらい、こちらの作品の新しい話を読むことができてとても嬉しかったです！これからも応援しております！ (2021年10月7日 21時) (
レス) @page25 id: 622fb3de14 (このIDを非表示/違反報告)
こばひな(プロフ) - アヅマさん» 頑張ってください！！応援してます！！！ (2019年5月9日 22時) (レス) id: 36295a5c6d (このIDを非表示/違反報告)
アヅマ(プロフ) - こばひなさん» コメントありがとうございます。当方忙しく更新が滞っていて申し訳ないです…。とにかく完結までは走り続けるので、店主の活躍を温かく見守って頂けると嬉しいです！ (2019年5月9日 1時) (レス) id: 7a303d5d51 (このIDを非表示/違反報告)
こばひな(プロフ) - この続きが気になります 続きをつくってもらえたらうれしいです (2019年5月6日 15時) (レス) id: 36295a5c6d (このIDを非表示/違反報告)
アヅマ(プロフ) - 雪音さん» コメントありがとうございます。面白いと言って頂けたようでうれしいです！時にリクエストとはどのようなリクエストでしょうか…？まずそれをお聞きしておきたいと思います。お願い致します。 (2019年4月6日 0時) (レス) id: 7a303d5d51 (このIDを非表示/違反報告)
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