91話 ページ2
岩融に声をかけた。
彼は猫のように目を細め、にまっと微笑んで、どうした、と尋ねてくる。
うむ、今はこのように、かわいらしく綺麗なんだが……少し前までの表情は決してかわいいとは言い切れなかった。
誰よりも背の高い岩融は、篠木さんにおずおずと駆け寄る皆に向けて、一切鋭い視線を崩さなかったのである。何故だろう、と気になった。
「ほう、流石は俺の主。おぬしに隠し事は出来んなぁ」
「隠し事、だったのか？ならば聞かせなくてもいいよ」
「いや、勘づかせてしまったからには話させて貰おう。私情だがな、単に、気になったのだ」
＿＿あれほど恨んでいた主を、何故そうもあやつらは簡単に赦したのか？
私の親友は静かに目線を前方に戻し、語り続ける。
「これは三日月殿からの受け売りだが、他の刀どもの審神者への印象は徐々に回復されていたようだ。病だと話した見習いのおかげで、少しは立て直せていたようでな」
「ふむ。あとはそうだ、歌仙に関してだが、やはり最初に審神者への謀反を企てたらしいと彼女から聞いたよ」
「ほお、だから歌仙兼定が審神者を赦したことで、あやつに気を使っておった他の刀も……」
納得したようなため息を吐いて、彼はしばらく熟考した。
私が思わず岩融を見つめると、橙色のつり目を物憂げに細めてこんなことを言った。
「審神者は、やり方を違えども、確かに刀を愛しておったのだな。いくら恨んだとしても人の心を読むのは刀の性だ。あやつらがそれに勘づかぬはずはないだろう……だからこのような終わりを迎えることが出来た」
「……岩融、」
「なに心配するな、主。おぬしらしくもない。ただ、昔を思い出しただけのこと」
前髪を風に遊ばれながらも、彼は無理をしたように口許をつり上げる。
それがたまらなく悔しかった。
……彼の前の主が刀を愛していたか、どうか。
その問いにはとうの昔に答えが出ている。
彼の持つ苦しみを、私が背負えたらどんなによかっただろう。
だが、今回は。頼まれ屋に頼ったことで……目の前の元審神者と審神者の彼女、そして刀剣達は、彼と同じ苦しみを背負うことはなくなったのだ。
それだけが唯一の救いだと、納得することしか出来なかった。
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小生(プロフ) - 久しぶりにこのサイトを覗かせてもらい、こちらの作品の新しい話を読むことができてとても嬉しかったです！これからも応援しております！ (2021年10月7日 21時) (
レス) @page25 id: 622fb3de14 (このIDを非表示/違反報告)
こばひな(プロフ) - アヅマさん» 頑張ってください！！応援してます！！！ (2019年5月9日 22時) (レス) id: 36295a5c6d (このIDを非表示/違反報告)
アヅマ(プロフ) - こばひなさん» コメントありがとうございます。当方忙しく更新が滞っていて申し訳ないです…。とにかく完結までは走り続けるので、店主の活躍を温かく見守って頂けると嬉しいです！ (2019年5月9日 1時) (レス) id: 7a303d5d51 (このIDを非表示/違反報告)
こばひな(プロフ) - この続きが気になります 続きをつくってもらえたらうれしいです (2019年5月6日 15時) (レス) id: 36295a5c6d (このIDを非表示/違反報告)
アヅマ(プロフ) - 雪音さん» コメントありがとうございます。面白いと言って頂けたようでうれしいです！時にリクエストとはどのようなリクエストでしょうか…？まずそれをお聞きしておきたいと思います。お願い致します。 (2019年4月6日 0時) (レス) id: 7a303d5d51 (このIDを非表示/違反報告)
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