Fairy Tale【Hyunjin】 (ページ9)

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ヒョンジンさんの働くカフェはどうやらこの街には無いらしい。駅を2つほど超えたところにあるとか。彼の隣に並び電車に乗り込んだ。

休日で人が多かったから、私はドアを背中にして立った。彼は私の壁になるように肘をドアにつけた。いわゆる壁ドン。近い。

「思ったより人が多いね。苦しくない？」

『大丈夫です…(お顔が整ってて眩しいとか言えない)』

「顔が赤いけど？」

『キニシナイデクダサイ』

彼はカタコトになる私を見てふふっ、と小さく笑った。
最近よく一緒に過ごすようになって分かったけど、この人はいたずらっ子なところもあるらしい。そのギャップにまたやられそうだ。

ずっと壁ドンされたまま、電車は目的の駅についた。恥ずかしすぎて顔どころかもう全身熱い気がする。

駅のホームは人が多くて、流されそうだなと考えたとき、右手に骨ばった大きな手と、指輪のひんやりとした感覚がした。ぱっと手を見ると、彼の手が繋がれていた。

「人多いから、迷子防止にね。あ、ごめん嫌だった？」

『……嫌じゃないです』

なら良かった、と彼は前を向いて歩き出した。本当であれば今すぐしゃがみ込んで叫びたいくらい心臓バッグバクだけど、抑えてなんとか歩き出した。

ホームを出ても、なんとなく手は繋がれている。そういえば私たちは付き合ってすらいないのだが、今更言い出せないし嫌ではないのでそのまま歩く。

だんだん細い道や曲がり角が増えてきた。結構入り組んだところにあるんだな。

「着いたよ、僕のバイト先」

『わぁ、おしゃれ…』

細い道に突如として現れたような、レトロな洋風カフェだった。ドアの周りには色んな木や花があって、一瞬お花屋さんみたいにも見える。ドアに吊り下げられた看板には、【StrayKids】と書かれていた。

「名前はね、〈迷える子どもたちが見つけるような、秘密の場所〉って意味を持って付けたって店長が言ってた」

『なんか、それ聞くだけでもう好きな気がします』

「じゃあ早速入ろっか」

ドアを開けるときに自然と手も離れた。彼の体温が無くなった手にちょっと寂しさを感じつつも、彼の後ろについてカフェに入った。

カランコロン、とドアベルの音が鳴ると同時に、いらっしゃいませーと声が聞こえた。あれ、この声なんかすごい聞き覚えがある。

「リノヒョーン。連れてきた〜」

「はいよー。適当なとこ座っててー」

そう声が聞こえると、奥から数人の店員さんがやってきた。