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「お待たせ。ごめんね、一人にしちゃって」
少しした後、ヒョンジンさんがトートバッグを持って戻ってきた。さっきと同じようにベンチに座り、袋から1枚のキャンバスを取り出した。キャンバスには薔薇や人の絵が描かれている。
『これ…ヒョンジンさんが？』
「そう。僕は普段絵を描いているんだ。それだけでは成り立たないからバイトもしてるけど。」
改めて絵をまじまじと見た。私は絵の知識が少しある方だけど、きっと誰が見ても才能を感じる絵なんじゃないかと思った。
『すごい、綺麗…』
「ふふっ、ありがとう。あまり人に見せることなかったから、なんか新鮮だなぁ」
『この絵、独学で？』
「いや、おじさんが教えてくれたんだ。」
『おじさんって…』
「アモルの飼い主。僕の絵の先生だったんだ」
「家がここから近くて、今はアトリエとして使わせてもらってる」
だからアモルとよく一緒にいたのか。アモルも彼にはだいぶ心を開いているように見えた。
にしても絵を描いてるだなんて、綺麗な人はやってることも違うなぁ。むしろバイトをしているところのほうが想像つかないぐらい。
「何枚か持ってきたから、そっちも見せてあげるよ」
ヒョンジンさんに他の絵も見せてもらった。やっぱり、どれも目が離せなくなるくらい惹かれる。胸がぎゅっと掴まれたような気がして、しばらく見つめていた。
「そんなに気に入った？」
『はい…どれもすごく好きです』
「じゃあ、その絵あげるよ」
『え、良いんですか？』
「僕が持っていても、いつか奥の方にしまわれるか捨てるかだし。せっかくだからもらって欲しいなって思って」
あまりにも私が見つめていたからか、ヒョンジンさんは持ってきた絵をバッグごとくれた。そのバッグにも絵が描いてあって、彼曰く落書きらしい。レベル高すぎてこれから使おうと思った。
「あれ、もう12時過ぎちゃった」
『え？あ、ほんとだ』
公園の入口付近にある時計の針は、すでに12の数字をまわっていた。1時間ぐらい話してたんだ。
「明日大学は？」
『あります。2限からだったかな』
「じゃあ、今日はもう帰ったほうが良いね。」
『そうですね…』
もっと話していたかったな、なんてちょっと悲しくなる。
「…寂しい？」
『え、』
心を見透かされたように言われて、あ、え、なんて声しか出ない。そんな私を見て彼は微笑んだ。
「またおいで。ここで待ってるよ」
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作者名：MICKEY | 作成日時：2024年2月23日 16時
