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「僕はヒョンジン。君は?」
『あ、えっと、A、です』
逆に名前を聞かれて、思わず声が上ずってしまう。恥ずかしさで顔が一気に赤くなるのを感じた。改めて私を見て話されるとドキドキする。
「こんな時間に会うだなんて、お伽噺みたいだね。この子に連れてこられたんでしょ?」
『はい。その猫ちゃんに着いてきたら、ここに…』
「この子はアモル。飼い猫だったんだ」
『飼い猫?野良の子じゃないんですか?』
私が聞き返すと、こっちに来て、というようにヒョンジンさんは手招きをした。正直近付くのもすごい緊張する。
ヒョンジンさんはベンチの空いている場所、つまり自分の隣に座るように言ってくれた。隣って、私普通に話せるかな。変なこと言わないかが心配。
「見て、これ」
『…あ、ほんとだ。首輪付いてる』
ベンチの下は、洋風なガラス灯と月明かりのおかげで明るかった。さっきまでは暗くて見えなかったアモルの首元には、水色の細い首輪とネームタグが付いている。
「この公園の近くに住んでた子。でも、そこの飼い主のおじさん、亡くなっちゃったんだ」
『そうなんですね…。寂しくないかな』
「そうなんだよね。僕はアモルの気持ちを読み取ることは出来ないけど、こうやって毎日会ってるんだ」
『ヒョンジンさんはいつもここに居るんですか?』
「結構前からね。おじさんが亡くなる前からアモルとよく一緒に居るよ」
『じゃあ、アモルの寂しさもきっと和らいでますね』
「そうだと良いなぁ」
会話のテンポが合うのか話しやすくてなんだか落ち着く。自然と緊張も薄れてきた。
ちょっとだけ、横目で彼を見た。後ろでハーフアップをしていて、取り切れていない髪を耳にかける仕草一つも綺麗だ。
現実とファンタジーの区別は付いてるけど、それでもなお王子様って現実に存在してたんだ…と思わせるほど。
「Aさんは普段何してる人?」
『大学生です。文学系の勉強をしてます』
「大学生かぁ。じゃあ僕と歳が近いかもね」
『ヒョンジンさんはおいくつなんですか?』
「僕はちょうど20歳。Aさんは?」
『私は今年で19歳です。一つ下ですかね』
『ヒョンジンさんは普段は何をされてるんですか?』
私がそう聞くと、ちょっと待っててね、と公園を出て言った。ヒョンジンさんが居なくなって冷静に考えるが、やっぱりまだ夢の中に居る気がしてならなかった。
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作者名:MICKEY | 作成日時:2024年2月23日 16時