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午後11時。いつも通り彼の居る公園に向かう。片手には昨日の絵画展のチラシを持つ。もうすでに一度見てるかもしれないけど、誘うだけ誘ってみよう。
『こんばんは、ヒョンジンさん』
「お、こんばんは。今アモルを描いてたところなんだ」
彼の手元を見ると、確かにすました顔のアモルが描かれていた。透き通った目は相変わらず綺麗だった。やはりこの猫は美人だ。
彼が一段落描き終えたところで、思い出したかのようにチラシを取り出した。
『あの、そういえばこんなチラシを貰ったんです』
「あ、その絵画展」
『既に行ってます？』
「いや、まだ見てないかな。そろそろ展示終わるし、行こうかと思ってたとこ」
「Aさんが良いなら、一緒に行く？」
私が言おうと思っていたことを、さらっと先に伝えられて逆に固まった。こういうところがずるい。
はい！行きます！とやや大きめな声で返事をすると、彼はあははっ、と声をあげて笑い始めた。
「相変わらず元気だね。見てるとこっちも楽しくなってくるなぁ」
『まぁ、私の取り柄みたいなものなので』
「良いね、君のそういうところ結構好きだよ」
なんでもないように放った言葉。私の心を掴んで離さなかった。もっとこの人の隣りに居たい、そう感じるには十分だった。
絵画展が終わる二日前。大きな展示というわけでもないからか、もう人は居なかった。受付のおじさん曰く、今日は私たちしか来てないらしい。
「なんか貸し切りみたい」
『ゆっくり見れますね〜』
「走り回ったりしないでね？」
『そんなことしませんよ！』
私は絵についてはよく知らない所も多い。センスも才能もないから、何がどう良いとかもはっきり分からない。ただ感覚的にビビッとくるものがたまにあるくらいだ(ヒョンジンさんの絵とか)。
だから余計な事はなるべく言わず、絵をじっと見る彼の横顔を眺めることにした。彼は一言も喋らず絵を見るため、デートにしては口数がかなり少なかった。まぁ楽しいならいっか。
しばらく歩いていると、二人とも同じ絵の前で止まった。この絵画展は色々な人の絵画を集めた展示会なので、様々な作風の絵があるが、その絵は一際惹かれるものだった。どこかで知っているような気がする。
作者の欄を見たが、不明となっていた。そんなことあるんだ。
「…この絵、もしかして、」
ヒョンジンさんが、何かを思い出したように口を開いたときだった。
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作者名：MICKEY | 作成日時：2024年2月23日 16時
