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何か起きないだろうか。自分が物語の主人公になったような、素敵なことが。
そんなことを想像しながら、一人夜道を歩く。スマホを見れば、もうすぐ夜中の11時になるところだった。
こんな時間にコンビニに向かうのも気が引けるが、お気に入りのボールペンのインクが切れてしまった。あれじゃないと勉強の気分が上がらない。ついでに書店にでも寄ってくか。
『あ、猫』
行く道の途中に白猫が歩いていた。目が青くて、童話に出てくる猫みたいだ。
撫でてみたくて近寄った。白猫はじーっとこっちを見ている。少し近づいても逃げないあたり、人馴れしているのだろうか。
『君、綺麗だね。名前なんて言うの?』
猫はニャア、と返事をした。もちろん、何て言ったかは分からない。それでも、暫く話しかけていた。
そうしていると、猫が奥の茂みに向かって歩き始めた。少し歩いては足を止め、私の方を見る。着いてきてって言っているみたいだ。
物語やファンタジーが大好きな私にとって、こういう展開はすごいワクワクしてしまう。何か、とても良いことが起きる気がする。
『君に着いていけば良いの?分かった。今行くね』
今が夜の11時だなんて考えもせずに、茂みに向かって歩き始めた。
でこぼこした土の道を歩き、白壁の洋風の家を通り過ぎ、大きな木の下で少し休憩。そのうち、広い公園についた。
真ん中には噴水があって、水がちゃんと湧いている。周りには色々な花が咲いている。遊具はあまり無くて、ブランコが1台あるだけ。とても幻想的。
『こんなところがあるの知らなかった…』
良いことあったな。思わずため息が漏れたときだった。
「あれ、お客さん?」
と、声が聞こえた。声のした方を見ると私を連れてきた猫がベンチに向かって歩いていた。そして、そのベンチには一人の男の人が座っていた。
「こんな時間に珍しいね。もしかしてこの猫に連れてこられたの?」
声をかけられても、返事をすることが出来なかった。それどころか息さえ止まりそうだった。
切れ長の目、白い肌、ふっくらとした唇、少し長い髪。彼のすべてがあまりにも綺麗だ。
彼の膝に猫がひょいと乗る。猫のことを撫でる仕草さえ、風が吹いてキラキラしたフィルターがかかって見える。
『王子様だ……』
物語が動き出した。そんな気がした。
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作者名:MICKEY | 作成日時:2024年2月23日 16時