探偵は知っている。 (ページ16)

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どんな医療団も引き上げてしまった激戦地区で尚暮らしている人々のために、医療チームを派遣している。その警護をする武装部隊を、私が率いることになったんだ。前任者が戦闘に巻き込まれて死亡したための緊急措置だ。この武装部隊の指揮官は、私で１３人目、過去全員が死んでいる。だが医療チームの医師や看護師には、一人の死者も出していない。それが我々の誇りなんだ。私も喜んで任務に赴く。

＾＾＾＾＾＾＾

彩シュンさん、もしかして、その病院にいた、とか？
黒木そうだ。
貴方シュンはその病院にいた。
黒木今の空爆は無人機で行われている。誤爆の可能性に気づいた軍は、すぐ病院に連絡し、全員が無事に避難したそうだ。ところが、シュンさんだけが引き返した。理由は、団旗だ。
貴方病院の屋上には、ＭＡＳＱＵＥＲＯＵＧＥの団旗が揚がったままだった。それに気付いたかかりの隊員が行こうとしたのを、シュンが止めて、自分が代わりに行った。旗は隊のシンボル。失うわけにはいかなかった。屋上から団旗をおろした直後に爆弾がちょうど投下されたって話。
黒木爆撃が終わり、激しい火災が収まってから皆がシュンさんを探したが、本人は勿論服の切れ端一枚、見つからなかったそうだ。焼き尽くされてしまったんだよ。でも団旗は瓦礫の下から発見された。奇跡なほど焦げても破れてもいなかったけど、その中央に、シュンさんが胸につけていたインシグニアが焼き付いていたって話だ。おそらくシュンさんは、団旗を胸の中に抱え込んで守っていたんだ。
貴方ＭＡＳＱＵＥＲＯＵＧＥはシュンを戦死とし、インシグニアの焼き付いた団旗をロンドンに送った。それで葬式が執り行われたそう。翔は納得できなかった。研修を担当していた教官にこういったそう。『使命のために命を捧げたのに、葬る墓もないなんて、、、』翌日、その団旗を持ち出して逃亡した。
黒木ＭＡＳＱＵＥＲＯＵＧＥの調べでは、砂原は航空チケットを何枚か買っている。最終地は、中東だ。シュンさんの死に納得できなくて捜しに行くのか、あるいは復讐のために行くのか、ただ死地を見たいだけなのか、それは分からない。だが、もう戻らない覚悟だろう。だからこそ脱走したんだし、アーヤの心から、自分を完全に消去しようとしたんだ。たとえ死んでも、アーヤが傷つかないように。

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