幸せを知らない少女 (ページ14)

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八百万目線

ガラガラ

「八百万…」

「すみません盗み聞きするつもりはなかったのですが…」

「すまねぇ…」

行ってしまう

言いたい言葉

今しかない

「轟さん！」

「私じゃダメですか？」

「？」

「好きなんです」

「横取りみたいになるかもしれませんが」

「私は好きです！」

好きじゃない

という言葉

いいえと言い切らない

その想い

私には少しわかるかもしれない

ごめんなさい

伝えたいこと言いたいの

Aさん

もしそう思ってるなら

ごめんなさい

言葉にすることは無いかもしれないけど

心で言うわ

ごめんなさい

「すまねぇ…ちょっと時間くれないか？」

「えぇ分かりましたわ」

ガラガラ

「時矢さん」

「百？」

「ごめんなさい」

「え？」

「盗み聞きするつもりはなかったのですが」

「聞いてしまいました」

「なんのこと？」

夕焼けに染まった彼女は何事もなかったかのように

涼しく笑っていた

「あの…好きじゃないって言葉の意味」

「いいえと言う意味ではないような言い方でしたが」

踏み込みすぎ…かしら

「うんそういいえじゃないよ」

「じゃあ」

「愛してる」

「！？」

彼女は窓辺に腰掛けてそういった

そしてクスッと笑い

少し振り返り校庭をみた

その目はどこか悲しそうで

何かを待っているよう

「時矢さん？」

「ごめん」

何も言わない時間

凄く重い

何を考えているんだろう

もう一度振り返った

そして口パクで何かを言って

彼女の身体は後ろに倒れて行った

私の喉は勝手に声を高く上げた

「きゃぁーーーーーーーーーーー！！！」

私は走る間に合え間に合え！

必死に手を伸ばす窓から身を乗り出すとそこには

「黒霧…」

もうそこに彼女はいなかった