【MHA】愚を守る【男主】 (ページ23)

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コンコン、と部屋の扉をノックする音に「帰ってください」と返す。

「君のお父さんのことについてだ。

知らなくてもいいことはたくさんある。
知りたくないと思えば、拒否してもいい。
だが、知らない方がもっと辛いこともある。

お前が選べ。」

子供相手に言うような言葉じゃない。
他のヒーローは皆、「お父さんのこと心配だよね～」と励ましにもならない言葉をかけてくるだけだった。

この人なら、と。

そう思って自分の部屋の扉を開けた。
これが初めて出会ったときのことだ。

イレイザーヘッド、と名乗ったそのヒーローは俺に父親が一体何をしたのかを教えてくれた。

人を殺したらしい。

何の関わりもない一般人を、10人殺したと。
理由なんて知らない。

イレイザーヘッドは、俺のご機嫌取りなんてしなかった。
だから俺は懐いた。

『ぼくね、ヒーローってキラキラしてるものだと思ってたの。

でもね、実際のヒーローって、下手くそな人ばっか。
下手くそな笑顔で、下手くそな演技で「もう大丈夫」って言うの。何が大丈夫なの？って思っちゃう。』

そう言うとイレイザーヘッドは笑った。
「じゃあお前が最高のヒーローになって、そいつらを最高のヒーローにさせてやってくれ」と。

「お母さんは、元気か。」

『……元気ですよ。毎日俺の顔を見ては父親を思い出すように俺に縋ってきますケド。』

病室で、ミイラ状態の相澤センセーは「…そうか。」と一言。

『早く治してくださいね。
こんなところで死なれちゃ困りますよ。』

そう言うと「大袈裟だ」と返される。

『俺、雄英にきて、アンタが担任だって知ったときちょっと嬉しかったんだ。

俺はイレイザーヘッドしか知らなかったから。
ヒーローじゃない、先生のアンタを見れるって。

でも何も変わらなかった。
裏表のない良い先生だと思うよ、俺。
先生に向いてる。』

そう言って、帰る準備を始める。
「せっかく果物買ってきたんですから、ちゃんと食べたくださいね」と声をかけると「…あぁ、ありがとう」と言われる。

『どうせ相澤センセーのことだから、すぐ復帰するんだろうけど…お大事に。無理しないでね～』

いつものように笑って病室を出ようとドアに手をかけたとき、

「俺もお前が自分の生徒で良かったと思っている。」

と、相澤センセーに告げられた。

『…俺、そこまで言ってないけどね！』

振り返ってニィ、と笑って病室を出た。

「…普通に笑えんじゃねえか。」