オクタヴィネル寮の番犬 ページ45
「…この匂い………海水か…？」
水を被った事で頭が冴えたのか、周りの雑魚共が攻撃しようとしてきての走馬灯なのかは分からないが…ふと頭の中に浮かんできたものがあった
懐かしき、俺が番犬と呼ばれ始めた頃の記憶
人魚が多い…特にタコと双子のウツボが最強とされているオクタヴィネル寮で人である俺がNO.4になって初めて暴走した時の…
──“Aさん、少しは落ち着いてください。貴方はまず怒ってる時こそ周りを見る癖をつけましょう。怪我を治すのにも魔力を使うんですから”
ジェイドせんぱ、い…周りを、見る？…先輩が治してくれてもいいじゃないですか……
口答え出来るくらいには意識が戻ってきたからか、目の前が明るくなった、それこそ海から引き上げられたみたいに。
声の通りに俺は目や気配を察知する魔法を使って周りを視ると数匹の赤子のような拳が飛んできている
「邪魔だ」
槍を構えて吹っ飛ばし、後ろのやつらには回し蹴りを
あ、出久達が居る、真後ろには血だらけの…相澤さん、もっと後ろの方には呆然としてるヤツらと俺や相澤さんが吹っ飛ばしたヤツらが転がっている……
──“白コリちゃん、深呼吸してみればぁ？稚魚ちゃん達怖がってっしぃ……あとお得意の治癒は？”
だからフロイ、ド先輩…白コリドラスって魚、俺は見た事な、いんですけど…
……あ、そか、相澤さんに治癒、しなきゃ…けど、バレないように軽くしか出来ない…相澤さんが危ねぇのに…
でも、約束したんだ、バレないように…
俺が此処で生きられるようにって…
──“大丈夫ですよ、どうぞお好きに暴れて下さい。貴方は1年近くも僕らの傍に居るんですから……”
“どんな事も対処出来るでしょう、Aさん”
相「A…おち、つけ…っ……」
「…っ……あいざ、わさん…」
分かってる、嫌になるほど分かりきってる
毎日毎日、寝る時に希望を抱いて、起きて絶望してきたんだ
この世界に、頼りになる先輩方は居ない
でも、でも、先輩らに教わった知識は俺の中に生きてる、俺の
大丈夫だ、
怒りに任せるなんて、慈悲の精神が一番ないのは俺じゃん…助けに来たのにダサいな、つくづく俺に主人公やヒーローは向かない
深呼吸して、周り見て、やれる事をやって…
反省と努力はその後だ
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作者名：赤月 x他1人 | 作成日時：2021年10月23日 2時
