episode2 ページ3
このままでは、2人とも命を落とすことになる。
なにか。
私に何か出来ることはないのか。
彼の手を握る力が強くなる。
それに応えるように、彼は苦しむ中で私の手を強く握り返す。
その刹那、私は彼に全てを捧げることを決意した。
「これ、受け取って」
私は最後の力を振り絞って、彼の手に意識を集中させた。
「なんだ、これ……」
彼の全身からパチパチと小さな電気が発されている。
私の個性を、彼に宛てた。
そのせいか、ヴィランへのエネルギー供給が止まったようで、相手の力が緩んだ。
「なんかわかんねえけど……!!行くぞ!」
__手、離すなよ。
私はもう一度彼の手を強く握った。
「無差別放電、130万ボルト!!」
私の身体中に電気が走る。
そのあとの記憶はなく、気づいたら病院のベッドの上だった。
・
警察の人やらなんやらに色々を訊かれ、覚えている範囲で答えた。
あの後ヴィランは無事警察によって捕まえられた。
人通りのない暗い夜道をひとりで歩いて帰ったことや、すぐに通報せずに逃げようとしたことなどをこっぴどく叱られ、挙句の果てには……。
__厄介な個性だな。
なんて言葉まで浴びせられ、私は酷く落ち込んだ。
……彼に会いたい。
死までをも覚悟したあの状況で手を差し伸べてくれた彼は、間違いなく私のヒーローだった。
会って、お礼を言いたい。
私は大量の電気を浴びたことでのショックで倒れたらしく、後に脳や心臓に異常がないか検査をすることになっていた。
私を助けてくれた彼も同じ病棟で入院しているらしく、彼は元々電気の個性を持っており身体に大きな異常はないため、元気になったら退院することになっているそうだ。
しかし、一度に大きな力を出してしまったため、事件の記憶がほとんどないらしい。
「何かその時の記憶の刺激になるものが必要になる。彼に会いにいってみてほしい」
私の強い願いが届いたのか、医者にそうお願いされた。
私は病室から出る許可を得て、彼のいる方へ向かった。
教えてもらった番号の病室に辿り着く。
「上鳴、電気」
どうやらこれが彼の名前らしい。
私が扉をノックをすると「はーい」と中から声が聞こえた。
その声の正体が彼だということはすぐにわかった。
「お邪魔します」
彼は私の姿を目にするや否や、「お前……」と声を漏らした。
「なんで、與さんがここに……?」
彼はなぜか私の名前を知っていた。
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作者名：さくら | 作成日時：2020年5月26日 9時
