episode14 ページ15
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次の日。
私は切島の家へ向かった。
「ごめん、今ちょっと忙しくて……」
私は追い返されそうになる。
「嘘じゃん!話聞いてよ」
珍しく声を荒らげると、切島は大人しくなった。
「こっちこい」と部屋に案内される。
相変わらず片付いていない部屋だった。
私はベッドに腰掛けた。
切島は回転式の椅子に座っていた。
話すことはちゃんと決まっているのに、なかなか口から出てこない。
「……ノートのことだろ」
先に話を切り出したのは切島だった。
まさか向こうから持ちかけてくるなんて思ってもなく、私は驚きに言葉が出なかった。
「あ……うん、そのこと」
「返してほしいか?」
「え?そりゃ、私と上鳴くんのだし、返してほしい」
そう言うと、切島は引き出しに閉まってあったノートをあっさり私に渡してきた。
もっと粘らなきゃ返してもらえないと思っていた。
「何間抜けな顔してんだよ」
「だって、返してもらえないと思って……」
「もう用は済んだだろ。さっさと帰れ」
切島は部屋のドアを開けて私を外に出した。
「あ、うん。ありがとう。なんか色々忙しそうだけど頑張ってね」
私がそう言うと、切島は「おう」と素っ気なく返事してドアを閉じた。
一体なんだったのだろう。
私は家に帰って、ノートを開けた。
最後にノートに文を書いていたのは、上鳴くんだった。
久しぶりに見る彼の字に、思わず頬が緩む。
まだやり取りをやめてから1ヶ月も経っていないのに、すごく懐かしく感じられた。
最後まで読み終わって、やっぱり私の知っている彼となんら変わらないことに安心した。
__会いたい。
変わらない彼の意思が今までは迷惑とまで思っていたのに、今じゃとても愛しい。
そして次のページにもなにか書いてあることに気づき、ページをめくった。
いつもは最後の行まで書いてある文が、1ページの4分の1にも及んでいなかった。
__いきなりこんなこと書いて、Aは驚くかな。
もしかしたらこれを読んで、やっと俺から離れられると喜ぶかもしれない。
どっちにしろ、俺らはこれで最後だ。Aがどう思おうと関係ない。けど、少しでも寂しいって思ってくれたらいいななんて思ってる。
嫌な予感がした。
……先を読むのが怖い。
それでも、私は読み進めた。
そして最後まで読んで、後悔した。
__もう、俺らは会えない。
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作者名：さくら | 作成日時：2020年5月26日 9時
