【ヒロアカ】私の個性は、人を愛しちゃいけない。【上鳴電気】 (ページ11)

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episode10 ページ11

次の日の朝。

学校に登校し、下駄箱で靴を履き替えていると、上靴の下になにか置いてあるのを見つけた。

それを手に取ると、どこかで見た事のある紙切れだった。

あんなことがあったあとだから、変な期待をしてしまう。

折りたたんである紙切れを広げると期待通り彼からのメッセージで、心臓が強く脈打つことに嫌でも気付かされる。

__芦戸から傘受け取った。会うのがダメなら、こうやって紙でやりとりできないか?

その言葉と一緒に、下駄箱の番号が書いてあった。

私は迷った。

こんなことしていいのか。

彼にはまだ会ってはいけない理由すら話していないのに。

午前中の授業はモヤモヤしたまま受け、あまり集中できなかった。

そして昼休みになって、三奈に相談をした。

「上鳴も諦めの悪い男だね」

三奈は彼を面白がった。

「私、この恋を諦めなきゃいけないってわかってるけど、上鳴くんと手紙のやり取りしたいって思っちゃう」

私がそう言うと、三奈は優しく笑った。

「なんだ、もう決まってるんじゃん」

「え?」

「手紙のやり取りしたいんでしょ?だったらすればいいじゃん、悪いことなんてないんだから」

三奈はそう言うが、私には引っかかる点がいくつかあるのだ。

それを話すと、三奈は「大丈夫だよ」と即答した。

「会えない理由なんかどうでもいいんだよ、上鳴は。あいつは今、会えない理由を知りたいことなんかより、Aと話したいってことの方が気持ち的には大きい」

__その気持ちは、Aも一緒なんでしょ?

三奈の言葉には説得力があった。

私は深く頷く。

「それに、やり取りしてるうちにもしかしたらAの個性が働かなくなる方法とか出てくるかも知れないじゃん?」

「それはさすがにないよ」

「明日のことなんて誰もわかんないでしょ!上鳴も乗り気なら、たまには粘ってみるのも青春じゃん?」

私は三奈に強く押され、上鳴くんと文通を始めることにした。

授業中にこっそり手紙を書いて、放課後書いてあった通りの番号の下駄箱に折りたたんだ紙を入れる。

__下駄箱に入ってた紙切れ見ました。文通ならできるから、これから、上鳴くんが飽きるまででいいから、私も上鳴くんとお話したい。

拙い文章でとても恥ずかしかったが、これが今自分の表せる限界だった。

また明日、返ってきてるといいな。

そう願って、下駄箱を閉めた。