【ヒロアカ】私の個性は、人を愛しちゃいけない。【上鳴電気】 (ページ2)

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episode1 ページ2

私が彼に初めて出会ったのは、高校1年生の春だった。

・

雄英高校経営科1年I組、與A。

友人と学校帰りに寄った喫茶店で、随分長いこと話し込んでしまい、帰りがすっかり遅くなってしまった。

薄暗くなった帰り道をひとりで歩く。

"ｶﾞｻｶﾞｻ"

後ろから聞き慣れない音がして、思わず振り返る。

「あれえ?バレちゃったあ?」

そこにはちゃんとした形のない、灰色の生き物がいた。

私はそれがヴィランだとすぐにわかった。

咄嗟に走り出し、曲がれる道をひたすらに曲がった。

何とか奴を巻こうと無我夢中になって走った。

しかし……。

「逃げられないよお」

行く先々に、そいつは現れる。

私は走り続ける体力もなく、ヴィランの体の一部である灰色の液体に巻き付かれた。

反射的に足掻くが、その抵抗虚しく、どんどん奴の体に沈められていく。

「そこまでだ!!」

薄れていく意識の中、私の目にぼやけて映ったのはヒーローの姿だった。

やっと助かる。

と、その期待も束の間、ヴィランの力が一気に増した。

身体中に伝わってくるヴィランのエネルギー。

その時私ははっと我に返った。

……自分の個性が暴走している。

私がヴィランにエネルギーを供給してしまっていたのだ。

「なぜだかわからないけど、身体の底力が湧いてくるなあ」

私の供給を良いことに、ヴィランは好き放題暴走を始める。

いつの間にか周りには多数のヴィランと警察、野次馬が私達の周りを取り囲んでいた。

しかし、誰もこちらに近寄ってこない。

いや、近づけなかったのだ。

もっと人通りのある道を選んで帰ればよかった。

そもそももう少し早く帰れば……。

いや、放課後に寄り道して喫茶店なんか行かなければよかった。

後悔の念がどんどんどん溢れ出てくる。

私は確実に死を覚悟していた。

__死ぬ前に、誰かを愛してみたかった。

ふと、そんな小さな願いが頭を過った。

「……ボルト!!」

よく聞こえなかったが、その言葉と同時に、大きな衝撃が身体中走り回った。

意識がはっきりしてくる。

「手出せ!!」

良好になった視界には、黄色の髪の男子が手を伸ばしている姿が映る。

私は力の限り手を動かし、その手を掴む。

「小僧めがあ!!お前も巻き込んでやるう」

しかし、ヴィランを怯ませられたのは一瞬だけで、彼の体ごと再び奴の体内に飲み込まれそうになる。